研究課題
本研究では、透過型電子顕微鏡視野下で機能する極薄のマイクロ電解セルを開発し、既開発の局在場可視化技術と組み合わせて、電解液中での炭素系電極の構造変化や局在電荷分布をナノスケールで可視化解析する技術の創出を目的とした。本萌芽研究では、200keV電子顕微鏡を走査型に改造し、透過力の強い200keV電子線によるSiNメンブレン電解セルの透過と、HARDF検出器による局在場検出技術への方針変更を行った。内径が3mmのHARDF検出器中心に対して、電子ビーム軸に約1.3mmオフセットを設定した。投影レンズ系を調整し、カメラ長を2.23mに調整すると、電子線は0.3mRadの偏向角を与え、これは50%のHARDF検出強度に相当する。この電子光学系で局在場による散乱電子情報を画像化できることを実証した。厚さ100nmで0.5mm角のウィンドウを持つSiNメンブレンにPt/Tiのマイクロ金属電極を加工し、これを液中局在場計測の電解計測の基部試料とした。ここにイオン液体を塗布し、もう一枚のSiNメンブレンで挟み込み電解セル構造を形成した。AgClを溶解したクロライド系イミダゾリウム塩電解液に対して、電位を与えると陽極電極にはAgデンドライトが樹状成長する。このデンドライト成長過程で樹状成長した銀針状結晶の先端に明確な局在場形成を検出する事ができた。樹状結晶に対して-10Vの電圧を印加すると、STEM画像中には先鋭部に明領域が形成された。針状結晶先端から0.4μmの同心円領域には90V/umの局在場が形成され、結晶先端には約10000個の局在電荷が形成されたことに対応する。また、極性分子電解液による局在場増強も観測された。本研究を通して、200keVの透過走査型電子顕微鏡を用い、SiNメンブレンで挟み込んだ極薄電解液セル中での局在場可視化が可能であることが実証された。
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