細胞培養のためのマイクロデバイスの設計と試作を行った。チップ内の微小な培養槽で細胞を三次元培養する場合、細胞量に対して培地量が少なく、栄養欠乏に陥りやすい。その問題を解決するため、細胞の接着面側からも培地供給を実現可能な方法として、マイクロ流体デバイス内に設置した多孔質膜上に細胞を培養することを着想した。上下に接する2本の流路の間を多孔質膜で仕切るような構造のチップをソフトリソグラフィー法によってPDMSを用いて作製し、形状やサイズの最適化を行った。 フィブロネクチンとゼラチンのナノ薄膜多層コーティングした細胞を一度に大量に播種するという集積培養法を作製したマイクロチップ内で実現するための培養手順の最適化について検討した。また、この三次元培養している線維芽細胞層の間に血管内皮細胞を1層共培養する方法で内部に血管構造を有した三次元組織の開発を試み、自発的血管構造の形成を確認した。 ハイドロゲル内部に細胞培養することにより模擬血管を作製することを試みた。管腔構造内に培養する細胞としては動脈由来の血管平滑筋細胞を用いた。用いるハイドロゲル素材についてはアルギン酸を中心に検討し、細胞外マトリックスや接着因子添加の効果についても検討したが、充分な平滑筋細胞の伸展は見られなかったため、ハイドロゲル材料としてコラーゲンを用い、pH変化によってゲル化させることにより、より優れた平滑筋細胞の管腔状培養構造体を構築することに成功した。
|