蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)等の原理に基づく従来の蛍光プローブは,生体イオンや生体分子の濃度変動に忠実に応答する.従って,当該イオン・分子の動態の可視化計測を実現するためには,その蛍光シグナルを常にモニターし続ける必要がある.このことは,従来型の蛍光プローブを用いたin vivoイメージングでは,モデル動物(線虫やショウジョウバエ,ゼブラフィッシュ,マウスなど)を常に蛍光顕微鏡下に固定した状態で行わなければならない,ということを意味する.このため,従来型の蛍光プローブでは,同時にイメージングできるサンプルの数が基本的には1個体に限られてしまい,統計的に有意な数のデータを取得するために,膨大な時間をかけることを余儀なくされる.このように,従来型の蛍光プローブはin vivoイメージングに対して技術的に大きな制約を与えている.本研究では従来の蛍光プローブとは異なる新しいタイプの蛍光プローブを開発する.特にか環状核酸のイメージングを例として,新しいプローブを開発する. 平成28年度は,平成27年度までに開発してきた蛍光プローブを線虫の神経細胞に発現させて評価を行うとともに,その評価に基づいて,蛍光プローブのさらなる改良を行なった.特に,平成27年度までは特に蛍光団周辺にアミノ酸変異を導入し,その輝度を向上させたが,平成28年度は環状核酸に認識部位周辺にアミノ酸変異を導入し,線虫の神経細胞における生理的な環状核酸の濃度変化に対応できるよう,蛍光プローブのチューニングを行なった.
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