前年度に合成に成功したエポキシ樹脂粒子を用いて、超音波-重力複合場における浮揚位置変化から微量分析の可能性を検討した。その結果以下のことが明らかになった。 1.エポキシ樹脂粒子にアビジンを共有結合により導入することに成功し、フルオレセインラベルしたビオチンを利用して表面に結合したアビジン量を定量した。その結果、一粒子当たり平均で9400分子のアビジンが結合していることがわかった。 2.アビジン-エポキシ樹脂粒子とビオチン結合金ナノ粒子間の結合により、密度変化を誘起することを検討した。50 nmと100 nm二種類の金ナノ粒子を用いてアビジン-ビオチン結合を起こし、金ナノ粒子結合エポキシ樹脂粒子を調整した。この粒子の超音波-重力複合場における浮揚位置は金ナノ粒子を結合していないものに比べて明らかに下に移動することがわかった。また、エポキシ樹脂粒子1つ当たり50 nm金ナノ粒子は4000個、100 nm粒子は1000個まで結合することがわかった。これは、金ナノ粒子同士が隣のアビジンサイトを妨害している可能性を示唆した。結合する金ナノ粒子の数は少ないが、密度変化の点からは100 nm金ナノ粒子を用いる方が有利であるので、その後の検討には100 nm金ナノ粒子を用いた。 3.エポキシ樹脂粒子に結合する金ナノ粒子の数を変化させ、超音波-重力複合場内での浮揚位置と結合金ナノ粒子数の間の関係を求めた。両者の間には直線関係があり、これから結合した金ナノ粒子数を決定できることがわかった。金ナノ粒子の結合による圧縮率の変化は小さく、浮揚位置は基本的に密度により決まる。密度と浮揚位置の間には直線関係があることが計算からも明らかであり、実験と計算が一致することがわかった。エポキシ樹脂粒子一つ当たり、200個の金ナノ粒子を検出することが可能であった。
|