生体高分子分析では汎用されている電気泳動法は、非水溶性合成高分子分析にはほとんど適用されていない。本研究では、非水溶性合成高分子の電気泳動分離の根幹となる、「有機溶媒中での高分子-界面活性剤間の相互作用」についての知見を蓄積するため、有機溶媒組成および界面活性剤が電気泳動移動度に与える影響を、8種のイオン界面活性剤について、キャピラリー電気泳動法を用いて検討を行った。その結果、臭化セチルトリメチルアンモニウム・ドデシル硫酸ナトリウム・臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウムを用いた際には合成高分子の電気泳動分離が可能であるが、残りの5種については分離が達成できず、適切な界面活性剤種の選択に関する知見を得ることができた。また、疎水性の高いイオン液体であるトリヘキシルテトラデシルホスフォニウムクロリドを用いても合成高分子の種類別分離を行うことに成功した。一連の分離結果を詳細に検討した結果、疎水性の高いイオン種を用いることが合成高分子の分離に有利であることを明らかにできた。また、有機溶媒中での高分子-界面活性剤間の相互作用は、主として疎水性相互作用に支配されているが、静電相互作用が比較的強く働く試料成分が存在すること、溶媒組成の影響を強くうける成分が存在することを明らかにした。 さらに、合成高分子のゲル電気泳動によるサイズ別分離手法を開発するために、有機ゲルの開発を行った。メタクリル酸メチルとエチレンジメタクリレートを用いてテトラヒドロフランを主溶媒とする有機ゲルの調整を試みた。合成条件に関する検討をこない、合成高分子のサイズ別分離を行うための有機ゲルの調整に成功した。また、汎用性の高い合成高分子の検出手法の開発に成功した。
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