研究課題/領域番号 |
15K13724
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
木村 恵一 和歌山大学, 学内共同利用施設等, 名誉教授 (50107140)
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研究分担者 |
門 晋平 和歌山大学, システム工学部, 助教 (10423253)
中原 佳夫 和歌山大学, システム工学部, 准教授 (10432600)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 細胞イメージング剤 / 真空蒸着 / 銀ナノ粒子 / オレイン酸 / オレイルアミン / 近赤外蛍光 / 透過型電子顕微鏡 / 配位子交換 |
研究実績の概要 |
生体深部に存在する細胞検出用の蛍光イメージング剤の作製を目指して、流動油面上真空蒸着法を用いる近赤外蛍光性超微粒子の合成に関する検討を行った。この方法では、合成時に超微粒子の凝集を抑制するために保護剤を捕集液に加えるが、本年は保護剤の種類が粒子合成に与える影響について調査した。保護剤としては、共通の疎水基(オレイル基)を有するが、極性基の構造が異なる4種類の化合物(オレイルアミン、オレイン酸、オレイルアルコール、オレイン酸メチル)を用い、銀ナノ粒子の合成について検討した。まず、円筒状のガラスドラムの中央の坩堝に銀を設置し、同時にドラム内に保護剤を含む捕集液を投入した。ドラムの回転によって内壁に捕集液の油膜を形成させ、その油膜に対して銀の蒸着を行い、蒸着後に捕集液中に含まれるナノ粒子を回収した。収率については、凝集物をろ別した後に遠心分離によってナノ粒子のみを沈降させ、さらに粒子表面に吸着する余分な保護剤を溶媒で洗浄して完全に取り除いてから求めた。 透過型電子顕微鏡による観察では、オレイン酸およびオレイルアミンを用いた場合でナノ粒子の存在が確認された。一方で収率については、オレイン酸を用いた場合でのみナノ粒子を収率よく得ることができた。オレイルアミンは一般的に金属ナノ粒子の合成でよく用いられる保護剤であるが、収率が低いために本手法では保護剤として適していないことがわかった。また、オレイルアルコールおよびオレイン酸メチルを用いた場合ではナノ粒子は観測されず、凝集物のみしか得ることができなかった。以上の結果より、流動油面上真空蒸着法ではオレイン酸が最も有効な保護剤であることがわかったので、今後はオレイン酸を保護剤として用いて近赤外蛍光性超微粒子を収率よく合成し、さらに親水性の配位子に交換することで水分散性を改善させ、最終的に蛍光細胞イメージング剤として応用することを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
流動油面上真空蒸着法において、金属ナノ粒子を収率よく合成できる最も適切な配位子(オレイン酸)を現在までに選定できたことは大きな前進であるが、近赤外蛍光性超微粒子の合成には至っていないため、進捗状況としてはやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
まずはオレイン酸を配位子として用いて、流動油面上真空蒸着法により近赤外蛍光性超微粒子を収率よく合成する。その後、オレイン酸を親水性の配位子によって交換して超微粒子の水分散性を改善させ、蛍光細胞イメージング剤として応用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加を予定していた学会出張を都合により急遽取りやめたことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費(消耗品)での使用を予定している。
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