研究課題/領域番号 |
15K13728
|
研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
末田 慎二 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (00325581)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | タンパク質間相互作用 / 細胞膜レセプター / FRET / テルビウム錯体 / GFP |
研究実績の概要 |
まず本年度はまずテルビウム錯体からGFPへの細胞表層でのFRETを利用したレセプターの相互作用解析を行った。具体的には、レセプターとしてGPCRの一種であるブラジキニンB2レセプター(B2R)を選び、B2R間のホモ会合体の形成を解析した。ここではB2Rを細胞表層においてテルビウム錯体とGFPでラベル化するために、B2RのN末端にBCCPを連結した融合タンパク質(BCCP-B2R)とGFPを連結した融合タンパク質(GFP-B2R)の発現プラスミドを作成した。作成した発現プラスミドを利用して、両融合タンパク質を動物細胞上に発現させ、その後、テルビウム錯体で修飾したBPL(Tb-BPL)を作用させて、B2Rをテルビウム錯体でラベル化した。ラベル化処理後、細胞からの蛍光をプレートリーダーで測定し、FRETを評価した。ここでコントロールとしてGFP-BPLの代わりに、N末端にFLAGタグを連結したB2R(FLAG-B2R)を利用して同様に解析を行った。その結果、解析の当初はコントロールの系おいても、FRETに由来する520 nm付近の蛍光が観察され、コントロールとの差を明瞭に観察することができなかった。しかし、測定溶液に含まれる成分を見直すことにより、コントロールではほとんどFRETが観察されない条件を見つけることができた。この条件下ではBCCP-B2RとGFP-B2Rを共発現させた系においてのみ顕著なFRETが観察され、B2Rが生細胞においてホモ会合体を形成していることが確認できた。また同様の測定系を別のGPCRであるアンジオテンシンIIタイプ1レセプター(AT1R)についても構築し、この系についてもAT1Rがホモ会合体を形成することを示すデータを取得することに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生細胞系に発現させた細胞膜レセプターについて、テルビウム錯体からGFPへのFRETを利用した測定条件について検討を行い、レセプターの会合に由来しないFRETを極力抑えた測定条件を見出すことに成功した。また、細胞膜レセプターのB2Rに関して、細胞表層でのテルビウム錯体からGFPへのエネルギー移動を利用した相互作用解析系を構築し、B2Rがホモ会合体を形成することを示すことに成功した。さらに、別の細胞膜レセプターであるAT1Rについても同様にホモ会合体を形成することを示すことができた。これらより研究はおおむね順調に進展しているものと判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度に得られた知見を元に、まずB2RのN末端とC末端にそれぞれBCCPとGFPを連結した融合タンパク質(BCCP-B2R-GFP)を利用して解析を行う。BCCP-B2R-GFPを動物細胞上に発現させた後、Tb-BPLを作用させてテルビウム錯体でラベル化を行う。この系についてテルビウム錯体からGFPへのFRETをモニターすることにより、細胞膜を介したエネルギー移動効率について詳細に検討する。また、ここでは時間分解蛍光測定を行うが、その最適な測定条件についても調査する。その後、細胞膜を介したエネルギー移動を利用して、B2Rの会合挙動の解析を試みる。ここではBCCP-B2Rと共に、B2RのC末端にGFPを連結した融合タンパク質(B2R-GFP)を動物細胞に発現させ、Tb-BPLを作用させてテルビウム錯体によるラベル化を行う。ラベル化後、テルビウム錯体からGFPへのFRETをモニターすることにより、ホモ会合体の形成を解析する。初年度に得られた細胞表層でのFRET分析で得られた値と比較して、B2Rの会合状況にどのような違いが見られるか検証する。また、B2Rだけでなく、AT1Rについても同様に解析を行う。さらにB2RとAT1Rはヘテロ会合体を形成することも知られているため、この現象の観察も試みる。ここではAT1RのN末端にBCCPを連結した融合タンパク質(BCCP-AT1R)とB2R-GFPを共発現させた細胞についてテルビウム錯体で処理した後、細胞膜を介したFRETをモニターすることにより解析を行う。一方でこれらレセプターの会合はそれぞれのアゴニスト(ブラジキニンやアンジオテンシンII)の添加により影響が出ることも知られているため、構築した解析系を利用して、アゴニストの添加効果についても検証する。
|