研究課題/領域番号 |
15K13729
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
新留 康郎 鹿児島大学, 理工学域理学系, 准教授 (50264081)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 金ナノロッド / ナノ粒子組織体 / 表面プラズモンバンド |
研究実績の概要 |
本研究ではまず金ナノロッドの2量体の作製を行った。既報の方法を試したが金ナノロッドの集合状態を適切に制御できず、2量体の収率も極めて低いことがわかった。参考にした論文の金ナノロッドはシーディング法によって調製されたものあり、我々の金ナノロッドは光反応法によるものである。ナノロッドの表面状態のわずかな違いによって実験結果が再現しないと考えられる。実験条件を細かく最適化し、金ナノロッドの2量体を高収率かつ再現性よく調製する条件を検索した。その結果、分光特性が再現性良く2量体以上の組織体と考えられるスペクトルに変化する調製方法を見出した。TEM観察によると50 %程度の収率でナノロッド2量体が得られていることがわかった。2量体の表面プラズモンバンドをセンシングに用いるには2量体の収率を向上させる必要があるが、我々の行った範囲では調製段階で収率を向上させることはできなかった。調製後に分画するために、幾つかの分離分画法を試みたが、最終的には密度勾配遠心分離法による分画する方法を選択した。ショ糖を用いたステップグラジエントによる遠心分離で、孤立分散ナノロッドと組織体を分画することに成功した。さらに、組織体を銀シェルで覆う操作が可能であることを確認し、その均一性と再現性の評価を行った。 銀シェル金ナノロッド表面に多様な表面修飾を施すために、ナノロッドを極性有機溶媒に分散する方法の開発を行った。アセトニトリル・ジメチルスルホキシド・ジメチルホルムアミドに分散できる表面修飾法を開発し、機能性ペプチドの吸着によっても粒子が凝集しない表面修飾法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文献に記載された2量体の作製法が再現せず、ナノ粒子2量体の調製がはかどらなかった。収率が向上しなかったので、分画の条件を検索したためにやや進捗が遅れている。表面修飾法は順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
28年度は銀シェル金ナノロッド組織体の固定を実現し、酸化プロセスを酵素反応および電気化学反応で制御し、免疫検出につなげる技術の開発に注力する。 HRPによる銀シェル酸化の抑制: HRPをラベルした抗体を用いて、過酸化水素による銀シェルの溶解と酵素反応による過酸化水素の分解をバランスさせる。 カタラーゼによる銀シェル酸化の抑制:抗体とカタラーゼの複合体を調製し、酵素不在時には銀が速やかに溶解し、酵素が固定されると確実に酸化を抑制できる界面構造を構築する。 電気化学反応による銀シェル酸化と分光特性変化の定量評価:銀シェル金ナノロッド複合体をITO電極上に固定し、銀の電気化学的酸化還元を可能とする。電気化学的な反応量と分光特性変化を正確に評価する。酸化還元に対するナノ粒子凝集体の分光特性変化量を規格化し、鋭敏なセンサー粒子となりうるナノロッド組織体を検索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究開始当初に金ナノロッド2量体を形成する実験が再現せず、約4ヶ月を2量体形成条件の最適化に用い、その後密度勾配遠心分離の条件設定を行った。このため、抗体など高価な生体機能性物質の使用量が少なく、そのほとんどは研究室在庫分でまかなうことができた。この分の費用が差額の主たる要因である。さらに、2量体の機能評価に関わる試薬・機器使用料などがあまり支出されなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
免疫検出に関わる実験を推進するために、抗体・抗原の標品・酵素類を早急に購入する。バイオ関連実験のためのディスポーザブルな実験器具も追加で購入する必要がある。所期の目的を果たすために、早急に免疫検出のための実験環境を整える。また、2量体の形成条件はほぼ確立しつつあるので、TEMやDLSなどの分析機器を利用してキャラクタリゼーションを行う。これらの機器の使用料に助成金を充当する。一連の成果を報告する論文投稿料にも支出する。
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