研究課題/領域番号 |
15K13732
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
由井 宏治 東京理科大学, 理学部, 教授 (20313017)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 分子ふるい / ナノ粒子 / 金属酸化物 / マンガン酸化物 / 放電プラズマ / 水中プラズマ |
研究実績の概要 |
本研究では、サイズの規定されたナノ細孔を持つ酸化マンガン材料を合成し、分子やイオンのふるいとしての応用を指向している。実際に分子ふるいとしての応用を目指すうえで、孔内表面への官能基導入によるふるいとしての性質制御が重要な課題となる。本年度は、水溶液中放電プラズマによる溶液還元法と水熱合成法を用いて、孔内表面に水酸基の多数配位した酸化マンガンナノ粒子の合成を試みた。まず、過マンガン酸カリウム水溶液中で放電プラズマを発生させ、溶液還元によって生成した酸化マンガンナノシートにプラズマ内で発生した水酸基ラジカルが多数表面に配位した酸化マンガンナノシートを合成することに成功した。 さらに、この酸化マンガンナノシートを出発物質とし、カリウムイオン存在下で水熱合成を行った結果、カリウムイオンを鋳型とした(2×2)トンネル構造の酸化マンガンナノ粒子を合成することに成功した。本生成物は、水酸基が配位していない従来法で合成されたマンガンナノ材料と比較して、ナノ孔内における水酸基とのクーロン相互作用や水素結合によって分子やイオンの移動度が変調された分子ふるいとして応用できると期待される。具体的な移動度の変化については、今後の研究において計測する予定である。 さらに、より大きな孔を持つ酸化マンガンナノ粒子を合成するため、プラズマ法で合成した酸化マンガンナノシートを用いて水熱合成を行う際に、マグネシウムイオンを加えてマグネシウムイオンを鋳型として合成を行った。その結果生成物が、より大きな孔サイズを持つ(3×3)トンネル構造を持つ酸化マンガンナノ粒子を含むことが分かった。このように、水溶液中放電プラズマと水熱合成を組み合わせた新しい二段階の合成法を組み合わせることで、孔サイズの異なる酸化マンガンナノ粒子を作り分けることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノサイズ孔を持つ酸化マンガン材料を合成し、分子ふるいとして応用する上で、孔内表面に配位させる官能基制御と孔サイズの異なる材料の作り分けが必須である。本年度の研究によって、まず、水溶液中放電プラズマ法と水熱合成法を併用することで、表面水酸基を導入したトンネル型酸化マンガンナノ粒子を合成できることを見出した。さらに、二段階目の水熱合成時に水溶液中に溶かすイオンのサイズによって、孔サイズの異なる粒子を作り分けることが可能であることが分かった。以上のように、掲げた二点の目的それぞれについて、研究は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
現時点でナノ孔サイズの異なる酸化マンガンナノ粒子の合成に成功しているが、特に3×3構造については、収率が50%程度にとどまっており、未だ十分とは言えない。鋳型として用いるイオン種を変えたり、水熱合成の温度や反応時間といったパラメータを最適化したりすることで収率を高めていく必要がある。また、合成された材料について、物質やイオンの移動度、物質選択性といった分子ふるいとしての性質を順次計測していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では、本年度予算を用いてマンガン酸化物ナノ粒子合成のためのハイプリアクターを備品として購入し、材料となる金属マンガンや過マンガン酸カリウムを消耗品として購入する予定であった。また、研究によって得られた成果発表の旅費や諸経費を計上していた。ところが材料となる消耗品については、主に研究代表者の研究室に保持していた在庫を使用することで本年度の研究には十分であった。また学会発表に関しても、他の予算品目を用いて費用を捻出したため、上記の分の残高が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度分の残高を2016年度に繰り越し、マンガン電極などの消耗品購入に充てる予定である。また、学会発表や論文投稿による成果発表の費用として用いる予定である。
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