本研究では、IgG抗体のN末端を特異的に蛍光標識することで、蛍光応答性抗体を作製することを目的としている。これまでに、IgGのN末端アミノ基の還元的アルキル化による蛍光標識を行うことで抗原の結合により蛍光増大を示す抗体が得られること、および、FRETと組み合わせて蛍光レシオ変化を得ること、抗原のリアルタイム検出が可能であること、などが達成されている。本年度は、まず蛍光変化の最適化を試み、pH依存性を示す蛍光基で標識した場合における抗原応答蛍光変化のpH依存性を評価した。フルオレセイン標識した抗体を用いて、種々のpHにおける抗原添加前後での蛍光強度変化を測定したところ、小さいながらもpH依存性を示し、抗原応答蛍光変化を増強できる可能性があることが示された。また、蛍光標識により抗原結合活性が低下する可能性が懸念されたことから、蛍光標識後の抗原結合活性をELISAにより評価して、蛍光変化と比較した。その結果、蛍光標識後も未標識のものと同程度の抗原結合活性を有しており、蛍光標識が抗原結合に与える影響が十分に小さいことが確認された。さらに、N末端蛍光標識抗体をリアルタイム検出に利用する場合に応答速度が十分でない可能性も懸念されたことから、抗原添加後の蛍光応答速度を評価した。その結果、秒単位でのリアルタイム検出には必要十分な応答速度を示すことが確認できた。以上の検討を通じて、N末端蛍光標識抗体の持つ様々な特性を評価して、今後の応用可能性を拡げることができた。
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