現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請者らはProtein Databaseから小型(10kDa)で金属結合部位があり、かつ基質結合場を備えたいくつかの土台タンパク質候補の中から、double stranded β-helixモチーフを持つキュピンファミリータンパク質を用いてきた。3つのヒスチジンからなる金属結合部位に鉄や銅を接合し、Tyrを結合部位から距離を変えて変異導入した(残基番号:Ile49, Ile60, Cys106, Ile108)。そのうちのI60Y, C106Y, I108Y変異体ではTyr-Cys結合を形成させることに成功した。さらに、近傍の立体障害を取り除くことによって、その結合量を増大させることに成功した。このように最適化された変異体について、UV-visスペクトルやESR、共鳴ラマンスペクトルおよび質量分析、X線構造解析によって特性を評価し、結合周りの状態を詳細に検討した。このCPDCは既知であるものの関連のないタンパク質中で人工的に生起させた初めての例である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は天然にはないCPDC形成に挑戦する。天然で見られるCPDCの構造から、自己修飾によって生じた簡単なPDCが二種類の反応経路(Path A:キノンもしくはカルボニル化合物への求核付加反応, Path B:水素原子引き抜きに伴って生じたラジカル分子のラジカルカップリング)で生成すると考えられる。そこで、金属にはCu/Feを用いて、前者では近傍にCys, His (Lys, Tyr)などの求核性アミノ酸を導入した変異体を作製し、架橋構造形成の有無を確認する。また、後者では、近傍にTyrやMetを追加導入し、CPDCの形成を試していく。上記方法を遂行する際に困難が生じた場合は、同様のキュピンタンパク質のホモログに加え、小型でかつ安定であるタンパク質モチーフ、(partly opened β-barrelモチーフのVOCタンパク質(PDB: 3rmu))を選択し順次、上記方法を試していく。
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