研究課題/領域番号 |
15K13744
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
廣田 俊 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (90283457)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 蛋白質 / 超分子 / 生体分子 / ナノバイオ / タンパク質構造体 / タンパク質ケージ / ドメインスワッピング |
研究実績の概要 |
4ヘリックスバンドル構造を有するヘムタンパク質シトクロム(cyt) b562およびそのヘムをアミノ酸置換で導入した2個のシステインとのチオエーテル結合によりタンパク質部分に固定化させたc型cyt b562変異体(cyt cb562)を作製した。Cyt b562およびcyt cb562を酢酸添加、凍結乾燥、再溶解の操作によりそれぞれ多量化させることに成功し、作製したcyt cb562多量体がcyt b562多量体より安定であることが分かった。吸収およびCDスペクトルから、cyt cb562の2量体が単量体に類似した活性部位構造と2次構造を有することが示唆され、cyt cb562の2量体の酸化還元電位は単量体の電位とほぼ同じ198 mV (NHE基準) を示した。Cyt cb562の2量体の詳細な立体構造をX線結晶構造解析により決定した。Cyt cb562はドメインスワッピングにより2量体を形成し、一方のプロトマーに属するN末端側の2本のαへリックスがもう一方のプロトマーに属するC末端側の2本のαへリックスと相互作用していることが明らかとなった。Cyt cb562の2量化では、N末端から数えて2番目と3番目のαへリックスを結ぶループ上のLys51-Asp54がヒンジループとして働いており、2量体のヘム配位構造は単量体の配位構造と類似していることも明らかとなった。さらに、結晶中で3つのcyt cb562の2量体が特異なケージ構造を形成していた。ケージの内部空間には15個のZn2+と6個のSO42-から成るZn-SO4クラスターが存在し、クラスターに含まれない6個のZn2+もケージ内に観察された。ケージ構造はケージに内包されたZn2+とcyt cb562の2量体のアミノ酸側鎖との配位結合により安定化されていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、cyt cb562の2量体がドメインスワッピングにより形成することをX線結晶構造解析により示し、結晶中で3つのcyt cb562の2量体が特異なケージ構造を形成し、その内部空間にZn-SO4クラスターが存在することを明らかにした。これらの研究成果をChemical Science誌に発表した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、新しい系でもドメインスワッピングを利用してタンパク質ケージの開発を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果をまとめ、論文執筆を中心に行ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
新しい系でタンパク質ケージの開発研究を行うため、タンパク質の作製や精製などの消耗品費として使用する。
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