研究課題
本年度は、ドメインスワッピングによるタンパク質ケージの構築を発展させ、融合タンパク質を用いて様々な形状の構造体を構築できる手法を開発し、この手法を用いて四角形やケージ構造を有するタンパク質構造体の構築を試みた。安定なホモ2量体タンパク質のサブユニット(A)と別の安定なホモ2量体タンパク質のサブユニット(C)を3ヘリックスバンドルタンパク質(B)で繋いだ直線状の融合タンパク質(A-B-C)を設計した。サブユニットAのC末端αへリックスにタンパク質Bを連結し、タンパク質BのC末端にフレキシブルなリンカー(GSGSG)を介してサブユニットCを連結し、融合タンパク質A-B-Cを得た。融合タンパク質A-B-CのA部位は別のA-B-C分子のA部位、C部位は別のA-B-C分子のC部位とそれぞれ分子間で相互作用し、融合タンパク質A-B-Cが四角形の4量体を形成するように設計した。サイズ排除クロマトグラフィーとSDS-PAGEによる分析の結果、融合タンパク質A-B-Cは目的の4量体のほか、2量体や高次多量体も形成したが、精製した4量体はタンパク質濃度を変化させても安定に存在した。また、X線小角散乱分析および高速原子力顕微鏡観察により、4量体は溶液中でひずんだ四角形構造を取ることが分かった。さらに、融合タンパク質のC部位を安定なホモ3量体タンパク質のサブユニットに変えることにより、融合タンパク質は安定な6量体を形成し、X線小角散乱分析により6量体は構造が比較的強固な立体構造体であることが示唆された。以上の結果より、ホモ多量体タンパク質の融合タンパク質を利用することによりナノ構造体の構築に成功した。本研究で開発した手法は簡便であり、四角形やケージなど様々なナノ構造体の構築に適用でき、新規バイオ材料への利用が期待される。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 7件、 招待講演 5件)
Protein Science
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Journal of Biological Inorganic Chemistry
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