研究課題
染色体末端のテロメアDNAは4つのグアニン(G) 塩基が水素結合によって4本鎖DNA構造(G4)を形成する。細胞分裂に従いテロメアが短縮され細胞死へと導かれるが、癌のような不死化した細胞ではテロメラーゼによりテロメア配列が伸長される。G4構造に強く結合するリガンドは、テロメラーゼ活性の低下が起こることから、抗癌剤として期待されている。しかし、従来のG4結合リガンドは、通常の2本鎖DNAにも結合することが副作用を引き起こす。本研究では、立体的な環状リガンドの設計によってG4構造特異的なリガンドを創成し、発育鶏卵によるin vivo評価を行う。これによって副作用に低い抗癌剤開発の新しい指針を提案するとともにG4をターゲットとする機能化環状リガンドへの展開、例えば新規癌診断システムの開発等を行う。平成27年度は以下の実験を行った。cNDI-2の合成:新規抗ガン剤としてピリジンを有する新規環状ナフタレンジイミドcNDI-2を合成した。cNDI-2はピリジンを有している。② DNAとの相互作用解析:4本鎖DNAとcNDI2の結合挙動解析(UV-Visスペクトル、CDスペクトルによる確認)を行い、cNDI-2の性能評価を行った。2本鎖DNAに対しても同様の測定を行い、2本鎖DNAに対する4本鎖DNAの選択性を示した。③リガンドとDNA複合体の構造変化の評価:CDスペクトル、Topoisomerase Iアッセイによって結合の解明を行った。
2: おおむね順調に進展している
ビピリジンを骨格に有するナフタレンジイミド誘導体の合成を試みたところ、合成に成功したが、収量が少なかった。そのため、予備的検討として、ビピリジンからピリジンへと設計変更し、合成した。その結果これまでのcNDIよりも、4本鎖DNAに対して、高い熱安定性を有する環状ナフタレンジイミドの合成に成功した。
今後は、細胞アッセイなど抗がん剤としての細胞毒性の評価等を行う。また、環状ナフタレンジイミドの4本鎖特異性は非常に高いため、他の誘導体についても、設計・合成および4本鎖DNAとの性能評価を行う。
すべて 2015 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
Molecules
巻: 20 ページ: 10963-10979
10.3390/molecules200610963
Bioorganic & Medicinal Chemistry
巻: 23 ページ: 4769–4776
http://takenaka.che.kyutech.ac.jp/2015/pub2015.html
http://takenaka.che.kyutech.ac.jp/2015/conf2015.html