研究課題/領域番号 |
15K13752
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
篠田 弘造 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (10311549)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 吸脱着効率 / 脱着促進 / カラム流通吸着 / 交流磁場誘起脱着促進 |
研究実績の概要 |
今年度の目標は、(1) 超微粒子から構成され内部に大きな空隙を有する大比表面積酸化鉄粒子を合成すること、(2) 水溶液中からの砒酸イオン吸着量とカラム脱着試験による回収率評価法を確立すること、(3) 交流磁場印加による自発的発熱を利用した脱着促進効果を調査すること、以上3点であった。そのうち、(1)および(2)の課題については順調に目標を達成した。当初バッチ振とうによる吸着後乾燥していたが、脱水による化学的結合が生じたためと思われる著しい低脱着率の問題があった。そこで、吸着工程においても脱着時同様、砒酸イオン溶存吸着液をカラム流通し、そのまま乾燥せずに脱着工程へ移行する方法をとることによって、脱着率を10%程度から50%前後にまで向上することができた。一方、(3)においては、脱着促進を実現する上での新たな課題が明らかとなった。すなわち、脱着試験実施の際、交流磁場印加の有無によらず脱着量に大きな差異が示されなかったことである。原因として考えられるのは、吸着材粒子内の空隙に滞留する溶液が粒子外部に放出される流れがないために、交流磁場により脱着したイオンが搬出されないことである。今後本研究を進めるにあたり、たとえばカラム内に充填した粒子に対する外部印加磁場強度にカラム上流から下流に向けて傾斜をつけることにより温度差を与える、超音波の印加により物理的に粒子内流動を引き起こすなど対策の必要性があることがわかった。 今年度得られた結果、途中経過について、資源・素材学会春季大会(2016年3月28-30日、東京)において報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的とする高空隙率、高比表面積、大粒径酸化鉄吸着材粒子の合成に成功し、熱処理によって交流磁場応答発熱可能な粒径まで焼結させ、一部magnetiteを含むmaghemite微粒子集合体としての多孔質磁性粒子が得られた。また、この粒子をカラムに充填し、外部から60Oe, 100kHzの交流磁場を印加するシステムも導入し、流通吸着および脱着試験が可能な環境を整えた。その意味では、概ね当初の計画通りに進んでいる。 しかし、吸着の際には毛細管現象により強力に粒子内空隙へ溶液が浸透し、脱着時に脱離液を流通しても粒子内空隙に流れが生じないため、外部磁場により固体表面から脱着したイオンが粒子外部に搬出されない問題が明らかとなった。その対策という、想定になかった課題が新たに生じた。その意味では、万事当初の計画通りとはいえない。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、吸着材として最適な粒子内空隙構造を有する酸化鉄粒子を得るための、作製条件の検討を進める。具体的には、酸化鉄作製の出発原料となるリン酸鉄水和物粒子から塩基性水溶液により溶解、再析出させる工程において、その処理液濃度や処理温度などの条件因子を詳細に検討する。また、カラム粒津脱着工程において、粒子内の空隙中における溶液の流動を促進するために、カラム上流から下流に向けて印加磁場強度に傾斜をつける、超音波印加により物理的に流動を誘起する、などの対策を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は、今年度において磁場印加脱着装置を完成させる計画であった。しかし、新たに脱着促進のための対策を講じる必要が出てきたため、次年度も引き続き検討することとなり、装置開発が順延したことが大きな要因である。
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次年度使用額の使用計画 |
脱着促進のため、超音波印加に対応したカラム形状の設計、作製を実施する。また、カラム内に印加される磁場強度に傾斜をつけるための磁場印加コイルの改造も実施する。これら前年度から継続して実施する装置改良、開発のために使用する。
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