研究課題/領域番号 |
15K13753
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
柳瀬 郁夫 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (10334153)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 二酸化炭素回収 / 層状構造 / 低温回収 / 微粒子 |
研究実績の概要 |
二酸化炭素の資源化・有効利用は二酸化炭素の排出抑制のための最重要課題の一つであり、その解決には混合ガスからの選択的な二酸化炭素分離回収技術の発展が不可欠である。二酸化炭素の排出温度は多岐に渡るため、化学的回収法を用いるには排出環境に応じた適切な材料開発が重要となる。本研究では、研究代表者がすでに見出した“中温域での二酸化炭素吸収体の開発で見出した結晶学的アプローチ”に基づいた層状構造の制御によって“低温(室温~100℃)かつ低濃度(大気中の二酸化炭素の濃度は0.04%)”で効率良く二酸化炭素を選択的に回収できる安価な元素で構成された無機固体材料を開発することを目的としている。平成27年度は、層状構造をもつナトリウムフェライトを合成し、その二酸化炭素吸収特性を評価し、以下の成果1)-3)を得た。 1)分散剤を用いてナトリウムフェライト粉末を合成したところ、粒子径が低下し、粉末の表面積が増大した結果、室温から100℃の範囲での二酸化炭素吸収速度を高めることに成功した。 2)層状ナトリウムフェライトの多形(α型とβ型)を原料の酸化鉄の結晶系を選択することで作り分け、それらの室温の低濃度二酸化炭素の吸収能を調査した。その結果、室温から100℃の範囲において、α型とβ型では互いに異なる二酸化炭素吸収挙動を示し、かつ吸収挙動が湿度の影響を受けることを見出した。 3)室温・低濃度(大気中の二酸化炭素濃度)において、ナトリウムフェライトの二酸化炭素吸収能を簡易デシケータ内にて調査した結果、α型およびβ型のどちらにおいても水分の供給、および湿度の増大によって飛躍的に向上することを発見した。特に、β型はその効果が大きいことがわかった。さらに、室温・低濃度で二酸化炭素を吸収したナトリウムフェライト粉末は、粒子表面に炭酸ナトリウムが生じていること、および再生可能であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年間の研究目的のうち、①二酸化炭素の反応速度を増大させるための層状ナトリウムフェライトのナノ粒子の合成、②層状ナトリウムフェライトナノ粒子の二酸化炭素反応機構の解析、および③ナトリウムフェライトナノ粒子の凝集抑制および高分散化のための複合材料(有機高分子材料、無機多孔質材料)の作製とCO2吸収能の評価、の研究項目において、平成27年度の研究では、(1)分散剤を用いた粒子径制御法を新たに見出したこと、(2)水を利用した二酸化炭素吸収現象が室温・低濃度二酸化炭素雰囲気で起こることを見出したこと、および(3)各種評価法を用いて反応機構の解明に着手していることから、おおむね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画のとおりに、ナトリウムフェライトのナノ粒子とセラミック多孔質体との複合化を行い、室温・低濃度二酸化炭素の吸収特性をガスクロマトグラフを用いて、実用化も考慮して評価する。また、水を活用した二酸化炭素吸収機構を明らかにし、新規な層状吸収材料を設計し、再生特性にも優れた二酸化炭素吸収材料を開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画を進める上で、次年度に研究費をより多く充てることで、効果的に研究費を活用でき、より優れた研究成果を上げることに繋がると考えたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度では、粉体評価に関連した研究(粉体へのガス吸着評価装置)等に費用を集中する計画である。
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