二酸化炭素分離(CO2)回収のために種々の研究開発が盛んに行われているが,化学吸収法に用いられる無機固体化合物は,中~高温域を対象としたものに限定されており,CO2濃度制御に必要な低温・低濃度のための材料開発はほとんど進んでいない.本研究では,安価でかつ無害な元素からなる、結晶構造の異なる2種類のナトリウムフェライトNaFeO2 (アルファ型とベータ型)に着目して、低温・低濃度二酸化炭素の吸収に及ぼす水の影響を調査することを目的とした. まず,各NaFeO2粉末の低温CO2吸収における水の効果を調査したところ,いずれのNaFeO2も湿度80%の湿潤な空気及びCO2雰囲気下で,CO2と反応し炭酸塩を生成することがわかった.さらにCO2濃度の小さい空気の湿度を変化させて室温でCO2吸収させたところ,湿度が高いほどCO2吸収反応が進行した.またアルファ型とベータ型を比較すると,ベータ型は高湿度条件下でのCO2反応が促進され,CO2吸収容量が大きいことがわかった.一方、CO2吸収速度はアルファ型の方が大きいこともわかった。このようなNaFeO2のCO2吸収は、室温~100℃の範囲で確認できた。また、NaFeO2は、湿度を制御することで空気中のCO2濃度(0.04%)から高濃度の純CO2までの幅広い濃度のCO2を吸収できたことから、本研究の目的が達成されたと判断した。 粒子表面に水蒸気が吸着すると、アルファ型ではNa1-xFeO2(0<x<1)と見られるNa欠損型の化合物であったのに対し,ベータ型ではFe2O3のみが結晶相として生成することがわかった。粒子表面におけるこのようなNa溶出挙動の違いがCO2吸吸速度および吸収容量の相違を生んだ要因と考えられた。また、NaFeO2はCO2吸収後に再生可能であることを確認した。
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