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2015 年度 実施状況報告書

単糖からアセトアルデヒドを経由する1,3-ブタジエンの一段合成

研究課題

研究課題/領域番号 15K13754
研究機関東京工業大学

研究代表者

馬場 俊秀  東京工業大学, 総合理工学研究科, 教授 (50165057)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワード1,3-ブタジエン / 単糖 / タルク触媒
研究実績の概要

報告者はタルク(Mgの酸素八面体とSiの酸素四面体が,1:2の層状構造をもつ)を触媒にすると,エタノールから1,3-ブタジエンが高収率(83%, エタノール圧力1atm)で生成することを見出している。この触媒をMg-Siタルクと記す。エタノールを原料としたとき,ブタジエンはアセトアルデヒドを経由して生成する。こうして生成したアセトアルデヒドは,さらに二量化反応によりクロトンアルデヒドに転化,クロチルアルコール経てブタジエンへと転化する。そこでエタノール以外の原料を用いても,エタノールとアセトアルデヒドが反応中に生成することができれば,1,3-ブタジエン生成反応が進行すると考えた。
Mg-Siタルクを用いて,エリスリトール(炭素数4の単糖)を常圧固定床流通系反応装置を用いて反応を行なった。反応400℃,エリスリトール圧0.01 気圧で反応させると,エリスリトール転化率100% で1,3-ブタジエン収率は11%を得た。原料をエリスリトールからマンニトールとソルビトールに替えて,反応を行なった。その結果,マンニトールとソルビトールの転化率が100%のとき,1,3-ブタジエンはそれぞれ10%と8%の収率であった。
現在これまでの結果を基に,Mg-Siタルク以外のタルク,即ちSi以外の構成元素を持つタルクを合成して,その触媒の最大活性を示す最適反応条件の探索,および反応条件が1,3-ブタジエンの収率に及ぼす影響を調べることで,高活性な触媒調製に挑戦している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

昨年度においては,タルク構造をもつMgO-XnOm を調製することが目的のひとつであった。ここでMgO-SiO2 系のタルクは調製することができた。その上,元素分析,粉末X 線解析,更にはXPS測定によって触媒表面における酸素イオンの結合エネルギーの測定により,1,3-ブタジエンの生成に及ぼす構成元素の影響を明らかにすることができた。
しかし,MgO-XnOmタルク,即ちSiO2以外のタルクの合成は未達成である。その理由は,MgO-SiO2 系のタルクを合成する場合,原料のMgOの選定が極めて重要であり,これに時間がかかり過ぎた。更に調製においては,出発原料水熱合成前の原料ゲルの酸性度,ゲルの撹拌条件、水熱合成温度と時間等も重要な因子であることも分かってきた。そこで,来年度においては,こうした貴重な経験と実験データに基づいて研究を推進する。

今後の研究の推進方策

研究計画の一つであるMgO-XnOmタルクの調製は引き続き水熱合成法で行なう。出発原料水熱合成前の原料ゲルの酸性度,ゲルの撹拌条件、水熱合成温度と時間の調製条件の最適化を行う。またタルク構造のMgO-XnOmの触媒活性に及ぼすMgO/XnOm 比の影響を明らかにする。現在進行しているのはXがGeであるタルクである。
また,結晶構造はMgO/XnOm 比に依存する可能性が高い。そこでMgO/XnOm 比の異なる条件で複合酸化物を水熱合成する。これをもとに触媒性能に及ぼす触媒構造の影響を明らかにする。結晶構造の役割は,結晶構造を持つMgO-XnOmとアモルファスMgO-XnOm の触媒活性とを比較することで明らかにする。
計画変更点は,量子化学計算によって,酸素をはじめMg等の電子密を計算する。これによって各元素が関与する反応経路を明らかにする。一連の量子化学計算の結果に基づいて,新たな触媒の調製に反映させる。

次年度使用額が生じた理由

本事業において六単糖からブタジエンを生成する触媒反応系を見出した。この研究において、より高選択的にブタジエンを合成できる触媒調製方法を着想した。この触媒調製方法を追加実験として実施すれば、ブタジエンを高選択的に合成する触媒開発を達成できる。この実験を遂行するため本事業期間を延長することが理由で、次年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

研究を加速し、ブタジエンを高選択的に合成する触媒の調製を次年度内に達成するため、触媒調製に従事する研究員を雇用する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] One-step catalytic conversion of ethanol into 1,3 butadiene using zinc-containing talc2015

    • 著者名/発表者名
      Yasumasa Sekiguchi, Sohta Akiyama, Wataru Urakawa, To-ru Koyama, Akimitsu Miyaji, Ken Motokura and Toshihide Baba
    • 雑誌名

      Catalysis Communications

      巻: 68 ページ: 20-24

    • DOI

      One-step catalytic conversion of ethanol into 1,3 butadiene using zinc-containing talc

    • 査読あり
  • [学会発表] タルクを触媒としたエタノールから1,3-ブタジエンへの一段転化反応2015

    • 著者名/発表者名
      秋山草多,小山 徹,宮地輝光,本倉 健,馬場俊秀
    • 学会等名
      第116回触媒討論会
    • 発表場所
      三重大学
    • 年月日
      2015-09-16 – 2015-09-18

URL: 

公開日: 2017-01-06  

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