研究実績の概要 |
二酸化炭素を有用な有機化合物へと変換する手法の開発は,炭素循環社会を構築する上で極めて重要である.本申請課題では,光エネルギーから電子を取り出し,この電子を炭素-炭素結合形成を伴う二酸化炭素の固定化反応の駆動力として活用することを目的としている. 本年度は,昨年度に引き続き,これらの基礎的知見を得る目的で二酸化炭素固定化反応を実現するために様々な触媒的二酸化炭素固定化反応について検討を行った.その結果,エポキシドと二酸化炭素との反応による炭酸エステル合成が,安価かつ容易な塩化マグネシウムを用いて効率良く進行することを見出した.本反応は,1気圧の二酸化炭素雰囲気下,触媒量の塩化マグネシウムをN,N-ジメチルホルムアミド中,100度で反応させると進行する.様々なエポキシドが利用可能であり,中程度から良好な収率で対応する環状炭酸エステルが得られた.本反応はマグネシウム触媒のみの添加で進行し,配位子や反応促進のための添加剤を必要としない実用的な反応であると言える. 一方で,本申請課題の目的である光エネルギーを活用する触媒的な二酸化炭素固定化反応を,コバルトやニッケル触媒を用いて検討を進めてきたが,本研究期間内での実現には至らなかった.1つの要因は,光触媒の選択,すなわち酸化還元電位のミスマッチにあると考えている.今後の展開を進めるためには,光触媒を専門家とする研究者との共同研究による分野融合が重要であると思われる.
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