研究課題/領域番号 |
15K13758
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
林 昌彦 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60192704)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Pd/C / レゾルシノール / エチレン / 酸化反応 |
研究実績の概要 |
「触媒量のPd/C―エチレン系によるフェノールおよびレゾルシノール誘導体の製造法」の課題に対して計画どおりにまず、フェノールおよびその誘導体の合成を行った。出発原料としてシクロへキセノンあるいはシクロへキセノールを用いエチレン雰囲気下(バルーンを使用)で5% Pd/Cを15モル%加えて反応を行ったところ、フェノールが90%以上の高収率で得られた。次に、レゾルシノール誘導体の合成を検討した。出発原料として1,3-シクロヘキサンジオンを用い、そこに、アセトニトリル中、5% Pd/Cを15モル%加えて、反応を行った。その結果、レゾルシノールの場合にはエチレン1 atmの代わりに、オートクレーブを用いて3 atmで反応を行うと効率よくレゾルシノールが得られることがわかった。このPd/C―エチレン系によるレゾルシノール合成を鍵段階として用い抗酸化剤として知られるレスベラトリールを5-メチル-1,3-シクロヘキサンジオンから5段階総収率68%で合成することができた。レゾルシノールをエーテルの形で得たい時には反応系中にアルコールを存在させることにより、ジエーテル体を得ることができた。ただし、レゾルシノールのヒドロキシ基の両方をメチルエーテル化する場合には、オルトギ酸メチルを2等量添加することが必要であることを明らかにした。エーテルの脱保護法として従来よく用いられる三臭化ホウ素を用いる代わりに、三塩化アルミニウム+ヨウ化ナトリウム系より穏和に脱エーテル化ができることを見出した。この方法で、二置換、三置換、四置換レゾルシノールの合成が達成できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では1年目にフェノール合成に、2年目にレゾルシノールを重点的に行う予定であったが、1年目にフェノールをやり終え、レゾルシノーまでできた、フェノールの場合の比べ、レゾルシノールの場合は、用いるエチレンガスの圧力やオルトギ酸メチルのなどの添加の必要性などの問題があったが、それらもすべてクリアできた。本研究で開発した方法を利用して抗酸化剤として有効な「レスベラトロール」の大量合成法も確立した。
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今後の研究の推進方策 |
レスベラトロールやポリダチンをはじめ、レゾルシノールあるいはその誘導体を分子骨格にもつ天然物や医薬品は数多い。「触媒量のPd/C―エチレン系によるレゾルシノール誘導体の製造法」を基本・鍵反応として用い、これらの生理活性化合物の超効率的短段階合成を実施していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
分析装置(機器類)の購入を予定していたが、他の財源で購入できたため、本挑戦的萌芽で助成された金額はそのほとんどをガラス器具類や薬品代に回すことにした。2年目でも主に、ガラス器具類や薬品代に使用する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
初年度の繰越し金と2年度給付額を合わせて何もガラス器具類や薬品代に使用する予定である。2年で残金はゼロにする。
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