研究実績の概要 |
本研究では、不凍タンパク質(AFP)が有する「氷の再結晶化を阻害する機能(Ice Recrystallization Inhibition, IRI)」を定量的に解析する方法を検討し、優れたIRI機能をもつAFPを解明して製品化に至るまでの進捗を得た。前年度の研究により氷核サイズの経時変化がOstward Ripening則(r3=r3(0)+Kt)で近似できること、再結晶化速度(K)を用いてAFPのIRI機能が定量できることが示された為、本年度ではこの手法に更なる改良と高速化を施すことを検討した。すなわち、前述の式を時間(t)で微分するとr3/dt=Kと単純化されることに注目し、これまでの様に一定時間毎に撮影した視野の異なる氷のスナップショットから200~300個以上の氷核のサイズ(平均値)を見積もるのではなく、視野を変えずに連続撮影した氷画像のムービーから複数個の氷核の成長速度を見積もることによって、より速く正確にKが求まること見出した。更に、この新たな定量的解析法を用いて様々なAFP試料のIRI機能を解析し、そのアミノ酸・遺伝子配列、不凍活性(熱ヒステリシス活性)、溶解度、耐熱性、耐酸・アルカリ性、分子構造との関係を調べた。その結果、魚類由来の小分子量AFP(40アミノ酸残基、分子量3.3kDa)であるBpAFPが、優れたIRI活性を発揮することが明らかになった。そこで蛍光ラベル法や超遠心などの技術を用いてBpAFPの機能が優れている理由を調べたところ、BpAFPは濃度に応じて分子が互いに連結して氷核への結合範囲を拡大して行く新しいタイプのAFPであることが判明した。この研究成果は英科学誌サイエンティフィック・リポーツにオンライン掲載されたほか、研究機関の主な研究成果としてリリースされた。論文数9、学会発表数41(うち招待講演5)。
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