研究課題/領域番号 |
15K13761
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター |
研究代表者 |
林 孝星 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 事業化支援本部技術開発支援部先端材料開発セクター, 副主任研究員 (80560151)
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研究分担者 |
渡辺 洋人 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 事業化支援本部技術開発支援部先端材料開発セクター, 副主任研究員 (00500901)
染川 正一 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 事業化支援本部技術開発支援部先端材料開発セクター, 主任研究員 (20520216)
藤巻 康人 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 事業化支援本部技術開発支援部先端材料開発セクター, 副主任研究員 (70392305)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 蛍光分子 / ピロン誘導体 / ナノ空間 / 多孔質シリカゲル |
研究実績の概要 |
平成27年度の研究において、スーパーマイクロポーラスシリカゲル(以下、SMPS)またはメソポーラスシリカゲル(以下、MPS)細孔内に導入したクエン酸を最適な条件で加熱することによって、高い蛍光量子収率を有する蛍光体を合成したことを報告した。また、細孔内で合成された蛍光物質をメタノールなどの極性溶媒で抽出し、薄層クロマトグラフィーを行うと混合物であることも報告した。本研究において合成し、得られた蛍光物質は分子であることがわかったため、本年度では抽出した混合物を単離・精製を行い、有機分析による構造の推定を行った。 最適な条件で合成した蛍光物質をメタノールに一晩浸漬させ、MPS細孔内から抽出を行った。得られた抽出液のメタノールを減圧下留去し、シロップ状の混合物を得た。得られた混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム-メタノール、酢酸エチル-メタノール)で複数回単離・精製を行い、目的の化合物を含む混合物を得た。この段階で、少量の副生成物が含まれており、単離・精製は困難であったため、少量の副生成物を含んだ状態で、IR、1H-NMR、MS測定を行った。IRの結果より、カルボニル基、エーテル結合、芳香環を有する有機化合物であると推定された。また、1H-NMRより、メチル基、メチレン構造、エステル結合、芳香環に由来する構造を有していると推定された。さらに、MS測定を行ったところ、210から226前後の分子量であることが示唆された。各有機分析の結果から、化合物の構造を推定したところ、「ラクトン」と言われる環状エステルであることが示唆され、2-ピロン誘導体であると推定された。今後、論文投稿を行う予定であり、必要なデータ(例えば、吸収スペクトル、発光スペクトル、13C-NMRなど)の収集を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
得られた蛍光物質はカーボンドットやナノカーボンのような構造ではなく分子であることが示唆され、今年度は構造推定を行うことに注力をした。それにより、得られた蛍光物質の構造をほぼ特定することに至った。本研究においては、SMPSやMPS細孔内に有機物前駆体を導入し、加熱を行ってもナノカーボン等を合成することは困難であると思われる。しかしながら、有機化合物前駆体を細孔内に導入し、加熱を行うと蛍光物質が得られるため、SMPSやMPSの細孔(ナノ空間)を利用することは意義がある。申請当初の予定とは異なっているものの、本研究の遂行に関して方向性は決まっているため、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
SMPSやMPSのナノ空間の応用展開を見据えた研究を計画している。 ①SMPSやMPS細孔内で合成した蛍光物質と合成後に細孔内から取り出した蛍光物質について耐久性の評価を行い、細孔内外で差が生じるか確認を行う。耐久性評価については、紫外線照射や酸素雰囲気下で、発光強度や蛍光量子収率、吸収スペクトルの変化を調査する。必要に応じて有機分析を行い、分子の化学変化を確認することも計画している。 この調査の目的は、SMPSやMPS細孔内に導入された分子が、外部の刺激によって状態・形態変化を起こす「センサー」としての応用ができるか検討することである。 ②細孔内で物質を合成するのではなく、有機機能性材料を大きさのあった細孔内に導入し光学特性などが変化するか、または別の機能が発現するか調査を行う。 この系の狙いは、バルク状態では分子が凝集するため本来の性能を発揮させることができないものを、ナノ空間に導入することにより単分子状態で存在させることを目的とすることである。また、ナノ空間に導入することで予期しない機能が発現するかということにも注目するよていである。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度において、当初予定していた結果と異なったために論文投稿の実験データの取得実験等が追加されて、予定が大幅に変わった。そのため、予定していた物品費および旅費が大幅に変更された。その結果、当該年度において前年度の繰越金額が加算され、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
論文投稿のためのデータが集まりつつあるため、論文の投稿に使用する予定である。論文掲載が決まり次第、現在の研究分野に関連のある学会参加(発表)に使用することも計画している。
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