研究課題/領域番号 |
15K13766
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研究機関 | 旭川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
宮越 昭彦 旭川工業高等専門学校, 物質化学工学科, 教授 (10249724)
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研究分担者 |
大島 功三 旭川工業高等専門学校, 電気情報工学科, 教授 (10310971)
小寺 史浩 旭川工業高等専門学校, 物質化学工学科, 准教授 (20634421)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | メタン分解 / マイクロ波加熱 / 水素貯蔵 / 金属内包フラーレン / 低炭素化学 |
研究実績の概要 |
本研究はマイクロ波加熱と触媒を組み合わせた反応器によりメタンを効率的に分解し、高純度水素と機能性炭素の量産技術を開発する。とくに本法で得られるメタン分解炭素は、触媒成分である金属種を核としてその周囲にグラファイトが多層取り巻く金属内包型炭素構造となる。この金属内包型炭素の形成機構を明らかにし、さらには核となる金属種に水素吸蔵能、周囲の多層グラファイトで水素収容能を付与して、軽量-大容量の炭素系水素貯蔵材料の作成法および最適な触媒原料を探索することが、本課題の主眼である。 平成27年度は、(1)マイクロ波加熱の特性を生かした水素吸蔵触媒種の迅速合成(ゾルゲル法調製)の試み、(2)調製した水素吸蔵合金を触媒に適用してのマイクロ加熱メタン分解反応の実施、(3)メタン分解物由来炭素の評価、を中心に研究を展開した。その結果、(1)マグネシウム添加した水素吸蔵金属種を適用した触媒について、既存触媒と比べて半分のマイクロ波出力値(250W以下)で水素収率が75モル%以上の活性を維持することを見出した。(2)メタン以外の低級炭化水素(エチレンやプロパン)でも、メタン同様に高純度水素と機能性炭素(ラマン分光により評価)が製造できることを確認した。(3)触媒へのマイクロ波による加熱伝搬性の時間変化に応じて、メタン分解炭素が球状に近い多層グラファイト(多層フラーレン)から繊維状のカーボンナノチューブへと移行することを見出した。 平成28年度は、(1)上記、水素吸蔵合金系触媒から得られたメタン由来炭素の水素吸蔵性の評価、(2)水素吸蔵合金系触媒から得られたメタン由来炭素の炭素電極材性能評価、を中心に検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイクロ波加熱の特性を生かした水素吸蔵触媒種の迅速合成については、現在まで良い方策が見つかっていないが、(1)マグネシウム添加触媒を適用したメタン分解反応においては、従来条件における約半分のマイクロ波出力で高い水素収率(約75モル%)を達成した。(2)長時間(1500分以上)反応を実施し、メタン分解炭素が形状が変化する現象を見出した。(3)メタン以外の低級炭化水素(エチレンやプロパン)でもマイクロ波加熱による分解法が適用し得ることを確認した。以上により、H28年度の主テーマである金属内包型炭素体の水素吸蔵‐収容能力調査するための試料は確保でき、金属内包現象を特定するための条件因子が定まりつつある。さらには、これら試料から良好な水素貯蔵体が見つかった場合には、水素貯蔵(吸蔵と収容)性能をさらに向上させるために水素雰囲気下ミリングによる処理工程をH27年度内に整備するなど、水素貯蔵素材の実用化に向けた実験環境が整っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は(1)水素吸蔵合金系触媒から得られたメタン由来炭素の水素吸蔵性の評価と、(2)水素吸蔵合金系触媒から得られたメタン由来炭素の炭素電極材性能評価、を中心に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者が電極試料等の購入において、当初予算よりも安価に購入できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
H28年度の研究遂行において、実験試料の購入費に充てる計画である。
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備考 |
(1)は鶴岡工業高等専門学校で主催したK-ARKシンポジウム2015での講演資料。(2)~(4)は以前JST主催新技術説明会で使用した公開資料。
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