研究実績の概要 |
強発光性π共役オリゴマーである(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー(TPCO)の結晶を分布ブラッグ反射(DBR)ミラーで挟んだマイクロキャビティにおいて、光励起下でキャビティフォトンと励起子が強結合した励起子ポラリトンを生成することにより、低励起閾値で発振するポラリトンレージングへの展開が期待される。平成27,28年度は、シアノ置換したTPCOである BP1T-CN及びBP2T-CN結晶をDBRミラー上に配置した面発光型マイクロキャビティを作製し、その発光スペクトルの角度依存性を測定した結果、エネルギー角度分散曲線に反交差分裂を観測し、励起子ポラリトンが生成していることを実証した。この結果を踏まえて、電流励起下でのポラリトンレーザーへ展開するため、平成29年度まで1年間研究期間を延長した。 電流励起によるポラリトンレージングを目指すにはp/n接合型の有機電界発光素子(OLED)を作製する必要がある。シアノ置換したTPCOはn型の半導体性をもつのに対し、無置換体のTPCOはp型の半導体性をもつため、これらを積層することによりp/n接合を形成することができる。そこで、下部電極のITOガラス上にDBRミラーをスパッタリングした基板上にBP2TとBP2T-CNを真空蒸着し、その上部に金電極を積層したマイクロキャビティ型のOLEDを作製した。得られたOLEDの電界発光スペクトルの角度分解特性を測定した結果、反射スペクトルおよびPLスペクトルと類似のエネルギー分散が観測されたことから、電流励起下においても励起子ポラリトンが生成していることを確認した。 また、より低次元のマイクロキャビティ構造として、BP2TとBP2T-CNをエピタキシャル成長させたナノワイヤ結晶を用いて光励起下でのレージングに成功し、今後、電流励起ポラリトンレージングを念頭に、それらのp/n接合の形成にも取り組んだ。
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