前年度見出した両極性有機半導体ポリマーをSAMにより単極化する手法と基板上へのSAMの塗り分けにより、単一の両極性有機半導体を用いて理想的な相補型インバータを作製する手法の高度化を検討した。その結果、再現性良く貫通電流を低減したインバータを作製できることを確立した。さらに、ケルビンプローブ法により実験的に求めた表面ポテンシャルと、SAM分子の分子軌道計算により求めた双極子モーメントの大きさと方向、更にそこから予測される表面ポテンシャルの値を比較し、実験結果の妥当性を検証した。その結果、n型への単極化に有効なジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン(MAPS)-SAMは、基板上でアミノ基部分が四級化されていることが示唆され、さらにXPS測定でも実験的にこのことが裏付けられた。これらの結果は理論計算、実験のいずれにおいてもSAMの効果を見積もることが出来ることを示しており、材料とデバイス設計において有用な情報となると期待される。これらの成果はAdv. Mater. 誌に掲載され、また、理化学研究所よりプレスリリースを行った。 さらにSAMによる表面修飾を有機薄膜太陽電池に展開することも検討した。逆構造型の太陽電池の基板部のZnO層表面をフッ素化SAM (FDTS)、またはMAPSにより修飾し、太陽電池特性に与える影響を検討した。PTzNTzBOBO/PC61BMが活性層の場合、FDTS処理により、Vocの大幅な低下が見られ光電変換効効率も低下したのに対し(9.0% => 6.4% )、MAPS処理では、Vocの変化は見られなかったが、Jsc、FFともに向上し、光電変換効率は9.4%に達した。さらにMAPS処理をPCE-10/PC61BMにも適用し、変換効率が7.2%から7.9%と改善したことから、SAMによる高効率化の一般性を確認できた
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