本研究では我々が開発したグラフィティックカーボンナイトライド(以下GCN)薄膜の電子デバイスへの応用を目指したものである。昨年度はより高品質の薄膜を作成すべく合成条件の最適化を行った。当初の予想以上に薄膜作成に用いる基板依存性があることが分かり、最適な基板を検討してきた。その結果、サファイアを用いたときのみ、GCN面内の周期構造に起因するX線の反射が得られた。さらにエリプソメトリーを用いて薄膜を評価したところ、X線で秩序性が高い薄膜ほど屈折率が大きいという相関が得ることが出来た。得られた屈折率は有機材料としては非常に高く、大きな可能性があるため詳細に調べた。その結果、炭素系材料(ファーボンファイバーやグラファイトシートなど)と相性が良く、干渉色を利用し綺麗に抵触することが出来た。一般に黒色の炭素系材料は、同じく光を吸収することで呈色する色素材料を混ぜても明るい色を実現することが困難である。干渉色を利用した本手法はカーボン材料の呈色に関し、新しい可能性を提示した。また屈折率が高いゆえ、干渉を利用した呈色でありながら角度依存性が小さく、カーボンファイバーを曲げても色味はほとんど変化しないといった特徴もある。 残念ながら当初の目的であるGCN電子デバイスへの応用は、GCNのドメインサイズを大きく出来ず、現在検討中である。マイクロメートルスケールのドメイン形成は困難であると考え、現在は共同研究で、ナノメートルスケールで薄膜を評価できないか検討している。
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