昨年度までフッ化炭素鎖を有するメタクリルアミド系モノマーからなるホモポリマーをフッ素系両親媒性高分子として用い、ナノ粒子薄膜の作製およびその表面特性を検討した。本年度はピレンをコモノマーとして組み合わせた共重合体を合成した。導入率1%、3%のものが得られ、分子量をMALDI-TOF/MSで求めたところ、いずれも3000-10000ぐらいの範囲であることがわかった。このポリマーをAK-225と酢酸の混合溶媒に溶解し、種々の混合比の溶液を調製した。ドロップキャスト法による成膜の検討の結果、わずか数パーセントのピレン導入量でもナノ粒子薄膜の形成に大きく影響を及ぼすことが明らかとなった。AK-225溶液中の共重合体の発光は、希薄溶液でモノマー発光のみとなる(ホモポリマー:コポリマー=97:3(wt/wt))のに対し、ナノ粒子薄膜の場合、エキシマ―発光が認められた。ホモポリマーと混合することで、モノマー発光のみが観測されるようになった。エキシマ―発光はモノマー発光ほど酸素に敏感ではない。これらのことは、ポルフィリン白金錯体による溶存酸素センサーの導入率が3X10<super>-4</super>(mol%)と同様に少量の発光性物質で応用可能であることを意味し、発光性物質の導入率の最適化が必要であることを示唆する。ピレン含有コポリマーナノ粒子薄膜の表面濡れ特性について、アルコール系溶媒の接触角がホモポリマーの場合とは大きく異なった。今後表面濡れ特性と化学的表面組成との関係を明らかにする必要がある。
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