研究実績の概要 |
本研究の目的は、ジャイロイド極小界面をもつ三次元ナノチャンネル空孔を有するナノろ過膜を創製することである。このために、重合性基を有する両親媒性液晶分子と極性分子との非共有結合形成による双連続キュービック液晶の構築に挑戦する。液晶状態での光重合によりナノ構造を固定化し、チャンネル内部に組織化された極性分子を溶媒洗浄することで空孔を有する分離膜を作製する。
光重合性ジエン基を有する没食子酸グリセリルエステルおよびアミドを設計・合成した。1,2-ジオール基をもつエステル化合物では液晶性は見られなかったが、アミド化合物はキュービック液晶性を発現することが分かった。これらの1,2-ジオール化合物と様々なイミダゾリウム型イオン液体との混合体を作製し、それらの熱相転移挙動を偏光顕微鏡観察、示差走査熱量測定、X線回折測定により解析した。臭化物イオン及びジシアノアミドアニオンを有するイオン液体と1,2-ジオール化合物との複合体は室温で液晶相を形成するのに対して、テトラフルオロホウ酸アニオンとトリフラートアニオンとの複合体では液晶性の発現は見られなかった。イオン液体のアニオン構造が液晶相形成に重要な役割をもつことが分かった。液晶相を形成した複合体を2枚のガラス基板間に封入して紫外線を照射した。液晶構造が固定化された自立性高分子フィルムを得ることに成功した。ナノ空孔材料を得るために、高分子フィルムをアルコール中に浸漬し、超音波処理を行った。風乾した高分子フィルムの赤外吸収スペクトル測定を行った結果、高分子フィルムの内部に組織化されたイオン液体が除去されていることが明らかとなった。この結果は、連続したナノ空孔の形成を示唆している。
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