研究課題/領域番号 |
15K13784
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
永野 修作 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40362264)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ブロック共重合体 / 液晶性高分子 / 表面偏析 / 高分子ブレンド / 液晶配向 |
研究実績の概要 |
高分子基材に液晶性ブロックコポリマーを添加し、加熱処理を施し、表面偏析した液晶性ブロックの形成する液晶構造およびその配向構造を解析し、以下の結果を得た。 ポリスチレンとスメクチック液晶を示す側鎖型液晶性高分子からなるブロック共重合体(PS-b-PAz)をポリスチレン(PS)膜に10 wt%ほど添加したブレンドを調製した。加熱処理により、表面張力が低いPAzブロックがPS基材表面に表面偏析することを、接触角測定およびTEM観察により明らかにした。表面偏析したPAzの液晶構造および配向構造を斜入射X線回折測定法により解析した。その結果、PAzのスメクチック液晶相に帰属される散乱ピークが面内(qy)方向のみに観察され、表面偏析したPAzブロックは、ランダムプレーナー配向のスメクチック相をとることがわかった。PS-b-PAz単独膜のPAzブロックは、対称的にホメオトロピック(垂直)配向となる。よって、表面偏析したPS-b-PAzは、PSブロックがPS基材にアンカリングされ、PAzブロックの液晶性の自己集合により、ランダムプレーナー配向性のスメクチック構造となることが考察された。 単独では強いホメオトロピック配向性を持つPAzのランダムプレーナー配向膜は、表面グラフト重合で得られる液晶性高分子のブラシ鎖にて観察される。表面偏析したPAzブロック鎖が、同様の配向特性を有するのは、ブレンド膜表面のPAzブロック鎖がブロック鎖の表面偏析構造と液晶の自己集合構造により、液晶ポリマーブラシ構造を自発的に形成することを明らかにした。また、表面偏析したPAzブロックは、ランダムプレーナー配向に起因する高い偏光応答性を示し、光学的応用としても有用な構造であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的である、表面偏析と自己集合性によって形成される液晶高分子ブラシ構造を達成することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
他の側鎖型液晶性高分子や導電性高分子半結晶性高分子構造についても、表面偏析によるポリマーブラシ構造の形成を試みる。また、賦形構造を持つPS膜に対しても、表面偏析構造の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
我々がこれまで研究を行ってきた液晶性ポリ(アゾベンゼンメタクリレート)ブロックを用いたブロック共重合体にて研究を行い、初期の過程としては十分な結果が得られた。よって、新規な液晶性ブロックやポリスチレン以外のブロックを用いずに、研究を進めたため、合成試薬、合成器具、構造同定の機器分析消耗品等の費用を結果として使用しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
今後、新規な液晶性ブロックや導電性高分子など、研究計画通りに研究を進めるため、合成試薬、合成器具、機器分析等の費用が大幅に増える見通しである。また、想定よりも早く結果が得られたため、成果発表等も積極的に行うため、国内外出張費などに使用予定である。
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