申請者は、表面偏析した液晶性高分子鎖の自己集合構造を利用した高密度高分子ブラシ構造の形成手法を提案した。以下に、具体的な調製手法と得られた成果を述べる。 ポリスチレン(PS)とスメクチック液晶を示す側鎖型液晶性高分子(PAz)からなるブロック共重合体(PS-b-PAz)を数wt%ほどポリスチレン(PS)膜に添加した複合膜を調製した。この膜を加熱すると表面張力が低いPAzブロックがPS基材表面に選択的に偏析した。複合膜の断面観察を透過型電子顕微鏡により行ったところ、PAz鎖の分子量とともにPAz鎖の膜厚が増加し、膜厚の実測から表面偏析したPAz鎖は、ほぼ伸びきり鎖となっていることが明らかとなった。さらに、表面偏析したPAzの液晶構造および配向構造を斜入射X線回折測定法により解析し、PAzのスメクチック液晶相に帰属される散乱ピークが面内方向のみに観察され、ランダムプレーナー配向であることも明らかにした。以上の結果から、PS-b-PAzを添加し加熱するだけで、自己集合的に高密度液晶ブラシ構造が作製できることを示した。従来、高分子ブラシ構造の調製には、表面開始リビング重合を用いる必要があった。本研究により極めて簡便な形成手法が見いだされたと言える。 調製した液晶性高分子ブラシ膜は、光配向も可能であり、また、基材となる汎用性高分子と使用するブロック共重合体には多くの組み合わせが想定できる。よって、今後、高分子表面・界面の研究とブロック共重合体の工業的利用に大きく寄与する結果であると考えられる。
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