研究課題/領域番号 |
15K13786
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
塚野 千尋 京都大学, 薬学研究科(研究院), 講師 (70524255)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | キャプシド / 化学合成 |
研究実績の概要 |
本研究ではウィルスの代表的構造である正二十面体構造を有するRNAファージMS2のキャプシドを合成標的に選択して、その合成を試みた。 RNAファージMS2は大腸菌に感染するウィルスで、最も原始的なものに分類される。その構造はウィルスの中でも単純で、外殻のキャプシドは180分子のタンパク質からなる正二十面体構造をとる。 初年度はキャプシドを構成する129残基のアミノ酸からなるタンパク質の合成から研究を開始した。また、ペプチドの合成にこれまで天然物合成等を通して培った白金やパラジウム触媒反応が適用できるか検討した。実際、RNAファージMS2のキャプシドタンパク質を合成するにあたって三つペプチドフラグメントA, B, Cの連結を想定し、固相合成法を適用した。得られた結果は次の(a)-(c)の通りである。(a) 三つ目のフラグメントC (102-129残基) は固相法によりフラグメント連結に十分量調整した。(b) 一つ目のフラグメントA (1-45残基)の合成を検討して、1-5残基目が容易に縮合しないアミノ酸配列であることを明らかにした。(c) 本ペプチド合成に白金やパラジウム触媒反応の適用は難しいことが明らかとなった。 さらに、合成したフラグメントAとCを連結するために一つ目のペプチドのC末端の修飾を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
RNAファージMS2のキャプシドタンパク質を合成するにあたって三つペプチドフラグメントA, B, Cの連結を想定した。そのうち、三つ目のフラグメントC(102-129残基) は固相法による合成に成功し、フラグメント連結に十分量調整した。続いて、一つ目と二つ目のフラグメントA, B (1-45, 46-101残基)の合成を検討したところ、これらフラグメントは容易に縮合しないアミノ酸配列が存在していることが明らかとなった。詳細に検討したところ、一つ目のフラグメントAで連結が難しいパートは1-5残基目であることが明らかとなった。また、本ペプチド合成にこれまで天然物合成等を通して培った白金やパラジウム触媒反応が適用できるか検討したが、難しいことが明らかとなった。これまでの報告通りアミノ酸の窒素原子の配位は想定した反応を阻害した。 予想以上にフラグメントAの合成が難しいため、現在の進捗状況はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の知見を生かして、次年度はRNAファージMS2の一つ目のフラグメントは1-5残基目を効率の高い縮合剤により連結して、その後、固相合成法によりフラグメントAを調製する。C末端の修飾をするとともに、すでに合成済の三つ目のフラグメントCとの連結をする。短縮型のタンパクを用いて、当初計画していたキャプシドの形成を検討するとともに2つ目のフラグメントBを合成し、天然型のウイルスキャプシドを合成する。 また、本年度の知見により合成しにくいパートは除いたキャプシドタンパク質を合成することで、RNAファージMS2のキャプシド構造形成の要因を明らかにすることが期待される。本キャプシドを用いれば、ペプチド残基の長さを変えることでキャプシド形成のONとOFFを制御できるか検討可能となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題では次年度に12395円に繰り越した。これは年度末に開催される学会の参加費・旅費を考慮して消耗品(試薬)を購入していたためである。すなわち、旅費が不足しないように12395円以上の消耗品を購入できなかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は少額であるため、次年度の配分経費と合わせて消耗品(試薬)の購入に利用する予定である。
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