研究課題/領域番号 |
15K13788
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
山崎 慎一 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (40397873)
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研究分担者 |
木村 邦生 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (40274013)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 高分子結晶化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、環状ポリエステルに流動を印加してエステル交換反応を誘起させ、そのエステル交換反応を介した分子間環拡大または自己縮環反応によって環状ポリエステルの分子量を自在に制御しようとする試みである。そのようにして得られた分子量の制御された環状ポリエステルの同種直鎖状ポリエステルに対する結晶化核剤としての利用可能性を検討する。この目的を達成するために、①環状ポリエステルの合成とキャラクタリゼーション(初期分子量の決定)、②流動印加後試料の分子量およびその分布測定、③分子量が制御された環状ポリエステルの結晶化核剤としての能力検証を行う。 環状ポリエステル試料として、1,3-dimesitylimidazol-2-ylidene (IMes)を用いたL-ラクチドの環拡大重合によって調製される環状ポリ乳酸を用いた。調製した試料の化学構造を現有のNMRおよび赤外吸収分光計で確認し、分子量とその分布をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。初期分子量評価の完了した環状ポリ乳酸に対し、所定の融液保持温度にてせん断流動を印加し、本研究提案で期待する流動誘起エステル交換反応を試料に生じさせた。せん断流動によってポリエステル類のエステル交換反応が促進されるという報告を参考に、印加するせん断速度や印加時間などの検討を行った。せん断流動を印加している際に起こる結晶化挙動を、現有のせん断印加機構を組み込んだホットステージと高感度・高解像度顕微鏡画像記録システムによって同時にその場観察し、エステル交換反応を介した分子量制御の最適条件決定を探索した。流動印加後の試料について、再びGPCによって分子量とその分布の測定を行い、エステル交換反応を介した環拡大経由の分子量増大または縮環経由の分子量減少が起こっているか検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
出発原料である環状ポリ乳酸の初期分子量、エステル交換反応による分子量制御を行うために最適なせん断速度やその印加時間、印加する際の温度などの条件を明らかにすることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに明らかになったデータに基づき、エステル交換反応を介して分子量を様々に制御した環状ポリ乳酸を調製する。今後は、この分子量制御された環状ポリ乳酸を直鎖状ポリ乳酸に添加して、その結晶化核剤効果の検討を行う。必要な直鎖状ポリ乳酸については、広く用いられている2-エチルヘキサン酸スズを触媒とした重合法によって調製する。また、使用する環状および直鎖状ポリ乳酸の平衡融点の決定は、現有の示差走査型熱量計(DSC)で行う。続いて、環状および直鎖状ポリ乳酸を所定の割合(直鎖状に対し環状を数%添加)でブレンドした試料を作製する。結晶化核剤能は試料中の分散状態に強く依存するので、試料の良好な混合を担保する必要がある。そこで、通常利用される混練法ではなく、溶液キャスト法によってブレンド試料を作製する。まず始めに、現有の加熱冷却が可能なホットステージと高感度・高解像度顕微鏡画像記録システムを用いて、静置下における結晶化過程をその場観察する。引き続き成形加工で重要な流動場における結晶化についてその場観察を行う。以上の結晶化直接観察によって、直鎖状ポリ乳酸に環状ポリ乳酸を添加したときの結晶化核剤効果が明らかにできる。具体的には、添加する環状ポリ乳酸の最適分子量や最適添加量などである。また、静置下と流動場で結晶化核剤能が同一であるか否かについても明らかにできる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の遂行のために必要不可欠なGPC装置が故障するというトラブルを解決するために、想定外の時間を要し、計画していた試料の調製のいくつかが行うことができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の計画では試料の調製は次年度においても行うため、未使用額を次年度経費と合算して使用することとした。
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