温度変化に応答して顕著な酸素吸収放出を示す「酸素貯蔵材料」の高性能化を図り、製鉄所や化学プラントにおける革新的な酸素ガス製造技術への応用展開を図る。本研究では、申請者が開発した新規酸素貯蔵材料:温度変化に応答して酸素ガスを吸収放出する層状マンガン酸化物Ca2AlMnO5+δに着目し、当該材料に対する化学組成制御と微粒子化プロセス開発により低温での酸素吸収放出特性を向上させ、温度スイングのみで多量の酸素ガスを製造可能な革新材料の創製を目指した。 昨年度の研究において、Caサイトの一部をSr置換した (Ca1-xSrx)2AlMnO5+δにおいて、Sr置換量増加に伴い酸素吸収放出温度が低温化することが明らかになった。また、定温でガス切換時における熱重量(TG)曲線から組成の違いによって反応機構が変化する可能性が示唆された。そこで、当該材料における酸素吸収反応機構を反応速度論の視点から調べた。 x=0~0.20の単一相試料を合成し、250~520℃の温度範囲でガス切換時のTGデータを計測した。Sr無置換(x=0)試料においては、400℃での酸素吸収反応率が時間変化に対してS字を描くように増加したのに対し、Sr置換したx=0.05~0.20試料では時間に対する反応率が直線的な増加を示した。固体の反応速度論解析から、S字の反応率変化は核生成律速、直線的な反応率変化は表面反応律速であると考えられ、Sr置換により律速過程が変化する可能性が示唆された。直線的な反応率変化は反応開始直後の反応率向上に有利であることから、Sr置換体が短時間サイクルによる酸素ガス製造プロセスに有効であることが判明した。
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