研究実績の概要 |
本研究では高原子価Mn(V)酸化物Ba3Mn2O8の酸素発生反応に対する電極触媒活性を調べることを目的に研究を行った.前年度までに,0.1M NaClO4中性溶液中でBa3Mn2O8/C複合電極をアノード分極すると,0.15 V vs RHE付近から酸素発生電流が流れ,良好な触媒活性を示すことが見出された.更に分極中の電極表面をRaman分光法によりin situ観察を行ったところ,カソード電流が流れるとO-O結合に由来するピークが見られ,酸素発生反応が実証された.しかしながら酸素発生量よりファラデー効率を測定すると,約50%程度であり,従ってアノード電流の一部はMnの酸化によることが確認された. そこでこの酸素発生触媒活性を,非水溶液中で利用できないかと考え,プロトン伝導性BaZr0.4Ce0.4Y0.2O3セラミックス電解質を用いた固体電解質型水蒸気電解セル(SOEC)のアノードへの適用を検討した.この目的に対し,まず難焼結性のBaZr0.4Ce0.4Y0.2O3の緻密焼結体を得る方法を検討した.その結果Zn塩を焼結助剤に用いた1400℃での反応焼結によって,相対密度97%以上の焼結体を作製することに成功した.この緻密焼結体を電解質に用い,Ba3Mn2O8をアノードに用いて水蒸気電解を行ったっところ,既報のコバルト系酸化物電極La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3電極よりも高い水蒸気電解電流が観測され,またインピーダンス法により分極特性を調べたところ,水の酸化に要する電荷移動反応抵抗が低減されていることが確認された.以上よりBa3Mn2O8はSOECアノードとして有効であることが示された.
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