本萌芽研究の目的は、3Dプリンターによって、幾何学を利用した新奇なポーラス金属を創製し、さらに発展させることで革新的な構造・機能材料へ繋げていくことである。ただ、金属焼結のできる3Dプリンターへの適用は、以下の理由で困難であった。1.規格外の微粉末を使うには、3Dプリンター(1億円以上)を所有していないと使えなかった。外部の大学、企業を含めて、色んな所に依頼をしたが、保守コストの観点からできなかった。そこで、いわゆる一般的な焼結方法への適用することで、新奇なポーラス材料の大量生産への目処を付けことにした。以下に実践例を挙げる。 a) APS樹脂を材料に使用する3Dプリンターを使って、ナノポーラス金属のもつ孔形状に似たポーラス材料を作製した。その後、その樹脂材料の表面に工業用プロセスで銅メッキを行うことに成功した。つまりAPS樹脂材料から特有なポーラス金属電極を作製できる道筋を作った。 b) MnNiCuFe合金粉末から作製したマクロポーラス材料を企業に依頼して作成した。マクロポーラス材料の作製方法自体は、ウレタンと合金粉末を基材として焼結することで作製する工業的方法である。このマクロポーラス材からMnを溶出することで、ナノポーラス化した。すなわち、マクロとナノの孔構造をもつ階層的なポーラス材料を作製することができ、大量生産することも原理的には可能になった。 c)市販の金のナノ粒子溶液とセルロースナノファイバ混濁液とを混ぜて、焼結することで簡便に金ペーパーを作製することに成功した。電極や触媒としての作製方法として一般化できると考えられる。
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