研究課題
全く新しい二次電池の駆動原理を開発するために、酸化物イオンを中心に据えた物質開発を行った。まず、酸化物イオンの酸化還元反応を電極反応に利用する新しい電極を実現するために、酸化物イオンの酸化還元反応の反応機構を調べた。具体的には、NaMO2において、酸化物イオンのエネルギー準位よりはるかに低いフロンティア軌道を持つと考えられるNi3+/Ni4+の遷移金属種を導入し、その反応機構を軟X線吸収分光と、多重項計算シミュレーションにより電子状態の観点から詳細に調べた。その結果、Niのd軌道は殆ど酸化還元に寄与しておらず、80%近くが酸化物イオンの軌道に空孔が入ることで電極反応が進行していることが明らかとなった。更に、酸化物イオンの軌道を中心とした電極反応が起こっているにもかかわらず、遷移金属が中心に酸化還元を示す電極と比較して、容量、出力、サイクル特性は変わらないことが明らかとなった。以上のことから、酸化物イオンを酸化還元種とする電極反応は、新しい2次電池の駆動原理として非常に有望であることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
全く新しい二次電池の駆動原理を開拓する本研究計画において、酸化物イオンを酸化還元種とする電極反応の反応機構を軟X線吸収分光と多重項計算シミュレーションにより明らかにすることに既に成功しており、研究計画が概ね順調に進展していると言える。
全く新しい二次電池の駆動原理を開拓するために酸化物イオンに注目した電極活物質の開発を行う。特に、酸化物イオンを可動イオンとする系を電極材料に応用するために、ペロブスカイト酸化物や層状酸化物などの様々な系において酸化物イオンが稼働する電極反応を探索する。また、酸化物イオンの拡散はエネルギー障壁が大きいことも予想されるため、積極的にナノ化を試み、拡散距離の短縮による新しい電極反応系の創出に取り組む。
すべて 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件)
Chemistry of Materials
巻: 28 ページ: 1058-1065
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