研究課題
本研究開発は、省エネルギー・低炭素社会の構築に資する革新的蓄電デバイスを構成する電極への応用を目指し、酸素イオンを可動イオンとするレドックスキャパシタ電極活物質を開拓する。本研究の学術的な特色として、酸素イオンを可動イオンとする固体電気化学材料を開拓することが挙げられる。これまでに研究対象とされてこなかった酸化物の酸素イオン挿入脱離の固体電気化学反応を探求し、O2-という多価アニオンの固体イオニクス現象についての新たな知識体系が得られる。本年度においては、スクルチナイト型構造の酸化物において、酸素イオンを可動イオンとする固体電気化学反応を見出した。具体的には、ナトリウムイオン電解液中での電気化学反応により、酸化物イオンが酸化物より可逆的に挿入脱離可能であることを示した。X線回折からこの反応は固溶体反応であることが示され、また、メスバウアー分光法から遷移金属のレドックスが酸化物イオンの挿入脱離に伴い生じていることが分かった。更に、第一原理計算から、構造中で酸化物イオンが比較的低いエネルギー障壁で拡散していることが分かり、実験結果を良く説明することが分かった。イオンの拡散に際しては、遷移金属と酸化物イオンは協同的に相互作用しており、遷移金属の選択がこの電極反応には重要な役割を果たしていることが示唆された。この反応は、様々な電解質を用いた電極反応に応用が可能であるため、学術的に大きな意義がある。
1: 当初の計画以上に進展している
全く新しい酸化物において、酸化物イオンがトポケミカルに挿入脱離できることを見出し、実際の電極反応に応用することに成功した。この成果は、特許出願を行うとともに、近日中に論文を投稿する予定である。以上のことから、当初の計画以上に進展している。
全く新しい酸化物において、電気化学的な酸化物イオンの挿入脱離が可逆的に可能であることを見出した成果をベースに、更なる材料探索の網を広げていく。例えば、遷移金属置換による酸素イオンのダイナミクスへの影響について、実験的に検証する必要がある。また、第一原理計算の結果から、酸化物イオンと遷移金属イオンの相互作用が重要であることが示されていることから、様々な遷移金属を含む組成について第一原理計算によるスクリーニングを行い、合理的な材料設計を効率的に行う。
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Nature Communications
巻: 7 ページ: 11397
10.1038/ncomms11397