研究課題/領域番号 |
15K13800
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
前田 和之 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60343159)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ゼオライト / メタロアルミノホスフェート / 層状化合物 / イオン交換 / 層間架橋 |
研究実績の概要 |
本研究は、層間有機カチオンを有する層状アルミノホスフェート(ALPO)を前駆体とし、層構造を保持しながらカチオン交換により層間に架橋金属イオンを導入することによりメタロアルミノホスフェート骨格の形成を目指すものである。従来の水熱合成法によらない新たなゼオライト類縁物質の合成戦略の可能性を開拓するもので、新規ゼオライト骨格の形成が期待される。 平成27年度は、(1)層状ALPO [H3N(CH2)4NH3]1.5[Al3P4O16]のAFY骨格への転換、及び(2)層状ALPO (EtNH3)3[Al3P4O16]の新規3次元MeAPO骨格への転換について検討を行った。両層状ALPO前駆体について当初水溶媒中でのアルカリ金属カチオン交換を検討したが、いずれも層構造が保持された状態でカチオン交換させる条件を見出すことはできなかった。層構造の保持には弱塩基性が望ましいが、水酸化亜鉛の沈殿を防止する必要もあり、有機溶媒系での2段階での層間カチオン交換を検討した。(1)については、酢酸アルカリ金属塩のメタノール溶液を用いることにより層構造を保持したまま層間有機カチオンを交換・除去することができた。さらに硝酸亜鉛/酢酸亜鉛混合物のメタノール溶液を用いることにより、予想される理想組成であるK:Zn:Al:P=1:1:3:4に近い組成の生成物が得られ、文献既知のAFY構造に近い粉末X線回折パターンを与えた。本成果は、国際ゼオライト協会により認定されているゼオライト骨格がトポタクティック層間架橋により形成された初めての例である。(2)については、ナトリウムカチオン交換による層間有機アミンの除去には成功しており、今後層構造の規則性保持状態を向上させるようカチオン交換条件を最適化することが必要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
層状アルミノホスフェート前駆体の有機溶媒中での2段階層間カチオン交換によるトポタクティック層間架橋により、有機カチオンを含まないAFY型ジンコアルミノホスフェートゼオライト骨格の形成に成功した。本成果は、ゼオライト類縁化合物合成の新しい方法論を提供できる点で大きな意義があり、既往の水熱合成法により得られるAFY型ジンコアルミノホスフェートゼオライトでは有機カチオン焼成時に構造が崩壊することを踏まえると、AFY型ゼオライトの応用の可能性を拡げるものと言える。これまで主にAFY型骨格形成に注力したため、現在のところ新規メタロアルミノホスフェート骨格の形成には至っていないものの、層状前駆体のカチオン交換が可能であることを確認しており、研究は概ね順調に進展していると判断している。
|
今後の研究の推進方策 |
AFY型メタロアルミノホスフェート系については、結晶構造や欠陥構造の評価を行うとともに、アルカリ金属カチオンの交換とガス吸着挙動への影響、亜鉛以外の層間架橋金属イオンの導入条件についても検討を行う。これらの検討結果を踏まえて、トポタクティック層間架橋法を利用した新規メタロアルミノホスフェートゼオライトや関連するメタロホスフェートの合成を目指す。
|