研究課題/領域番号 |
15K13803
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
菅野 了次 東京工業大学, 大学院総合理工学研究科, 教授 (90135426)
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研究分担者 |
平山 雅章 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (30531165)
鈴木 耕太 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (40708492)
小林 玄器 分子科学研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (30609847)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ヒドリドイオン導電体 / 結晶構造 / 高圧合成 / イオン導電機構 / 電気化学デバイス |
研究実績の概要 |
「ヒドリド導電メカニズムの開拓とデバイス開発」を目的として、ヒドリドイオン(H-)が固体内を拡散する物質を探索し、その構造、導電メカニズムを調べた。高圧法により合成した酸水素化物La-Sr-Li-H-O系のヒドリドイオン導電体の結晶構造をX線、中性子回折測定データを用いたリートベルト解析法により明らかにした。その結果、この酸水素化物材料はK2NiF4型の結晶構造を有し、La/Sr比,H/O比を様々に変化させた固溶体を形成することが明らかになった。特にアニオン副格子中のH, O比を制御すると、ヒドリドイオンの占有位置が変化し、H/O比が小さい組成ではLiX6(X=O, H)八面体のaxial位置、大きい組成ではLiX6(X=O, H)八面体のaxialおよびapical位置に存在することが明らかとなった。これらの結果から、ヒドリドイオンは主にペロブスカイト層内のaxial位置を通じて拡散することが示唆された。Axial位置およびapical位置のアニオンに隣接するカチオンはそれぞれ、LiとLa/Srであることを考慮すると、より強く正に帯電したカチオンとO2-の結合が優先的に形成し、一価のLi+がH-と結合したと考えられる。このアニオン配列の性質を利用し、ペロブスカイト層に酸化のカチオンであるSc3+を導入したBa-Sc-H-O系の酸水素化物の合成を行った。その結果、O2-がaxial位置を、H-がapical位置を優先的に占有することが明らかになった。このことから、カチオン価数を制御することで、結晶構造中のアニオン配列を制御できることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主軸となるLa2LiHO3系材料の結晶構造解析が進み、アニオン分布の状態を明らかにすることができた。またアニオン分布の様子から、ヒドリドイオン拡散がペロブスカイト層内のLiX6(X=O, H)八面体のaxial位置を介して進行することを見出した。これらの実験および解析結果をもとに、Ba-Sc-H-O系においてアニオン分布を変化させた材料を見出しており、La2LiHO3系材料とは異なるイオン拡散メカニズム発現が期待できる。今後の探索の中心となる新材料系が発見され、当初予定していた研究が順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
Ba-Sc-H-O系を主軸として、さらなるカチオン組成の制御、アニオン欠陥、格子間位置の導入により物質系の多様化を図る。ペロブスカイト層、岩塩相、さらには両層を利用したヒドリドイオン拡散を実現させ、そのイオン導電メカニズムを明らかにする。さらにはK2NiF4型構造からAn+1BnO3n+1で記述されるRuddleseden-popper型構へと構造の多様性を展開し、イオン導電率に優れた材料を探索する。電気化学デバイスの構築を視野に入れたセル構成の検討も行う。
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