研究実績の概要 |
本研究は、ガラスの密度が対応する結晶よりも大きいというガラスにおける極めて特異な結晶化挙動を解明すること目的とする。本年度得られた結果を以下に示す。 1) 21Gd2O3-63MoO3-(16-x)B2O3-xTeO2組成(x=0, 2, 4, 8)のガラスを作製し、Strongな挙動を示すB2O3とFragileな挙動を示すTeO2という異なったガラス形成酸化物の存在による自己微粉化挙動を検討した。いずれのガラス組成においても、結晶化により強弾性結晶Gd2(MoO4)3が生成することを明らかにした。2)TeO2量が増えると、自己微粉化は急激に抑えられ、特に、x=8の組成のガラスでは、自己微粉化が起きず、バルク状の結晶化ガラスが得られることを見出した。3)自己微粉化した結晶は三角錐状の形状と、屈折率が周期的に変化するという現象を示すが、TeO2量が増えると、この屈折率の周期的変化も抑えられることを見出した。また、熱処理温度が高くなると、周期的な屈折率変化が消失することを明らかにした。4)自己微粉化は、結晶と残存ガラス相との界面で巨大な歪が生じるためであり、その歪がいかに緩和されるかで、自己微粉化の挙動が大きく異なる。B2O3の一部をTeO2で置換することは、ガラス構造に結合力の弱いTe-O結合を導入することを意味しており、また、高温での熱処理は、粘度の低下(流動性の増大)を招き、これらのガラス構造および結合状態の変化で、結晶とガラス相界面での歪が大幅に緩和され、自己微粉化が抑えられたと結論した。5) 強弾性結晶Gd2(MoO4)3での屈折率の周期的変化は、歪を解消するために結晶のc-軸が結晶成長方向に沿って回転するためにと考えられ、歪の緩和、すなわち、自己微粉化と密接に関連していることを提案した。6)本研究により、本ガラス系での特異な結晶化挙動の解明に成功した。
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