バルクの電解液に接した鉄電極をアノード分極すると,低過電圧では鉄が活性溶解し,高過電圧では鉄表面が酸化被膜で覆われて不動態化する.活性溶解から不動態化へ移行する電位付近では測定される電流が自発的に振動することが知られている.電流振動発現時には,電極上に活性溶解と不動態化領域の空間伝播が周期的に発生しており,電流振動波形には空間的情報が含まれているといえる.鉄電極を隙間においてアノード分極すると,同様の電流振動が発現すると予想されるがその波形は変化すると期待される.そこで本研究では電流振動波形の解析により,隙間内のpHや電気化学的に活性な面積を定量的に評価する手法について検討した. 隙間鉄電極で定電位測定を行ったところ,隙間では鉄電極の場合と同様電流が自発的に振動することが確認された.電流振動の一周期の波形に着目すると,隙間ではない鉄電極の場合と明確な違いがみられた.特に,電流の減少過程でみられるショルダーの有無で,種々のpHで同様の検討を行ったところ,隙間内ではプロトン濃度が約4倍に上昇していることがわかった.また振動の振幅解析によって,電気化学反応が周期的に進行している面積の同定に成功した.以上より,隙間鉄電極における電流振動の波形に解析によって,隙間内の局所pHや電気化学的に活性な面積を同時に知ることが可能となり,本手法を改良することによって隙間腐食のモニタリングが可能になると期待される.
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