研究課題/領域番号 |
15K13807
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
野平 俊之 京都大学, エネルギー理工学研究所, 教授 (00303876)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ダイヤモンド / 溶融塩 / 電解合成 |
研究実績の概要 |
本研究は、これまで常圧の液相からは合成例のないダイヤモンドを、高温溶融塩中において常圧で電解合成することを目的としている。 平成27年度は、炭素源となる添加物および水素源となる添加物を含む溶融LiCl-KCl中において電気化学測定を行い、ダイヤモンドが生成しやすいと考えられる電解条件をある程度絞り込むことを目標とした。並行して、実際に電析試料を作成し、機器分析によりダイヤモンド生成の有無を調べた。 共晶組成LiCl-KCl(融点352℃)に、炭素源となる添加物および水素源となる添加物を所定量投入して実験を行った。作用極にはニッケル板、対極にはグラッシーカーボンロッド、参照極にはAg+/Ag電極を用いた。実験温度は450-650℃とした。電気化学測定装置(HZ-5000)を用いて主にサイクリックボルタンメトリーにより電気化学反応の解析を行った。炭素源となる添加物および水素源となる添加物に起因する還元電流を観測した。また、ダイヤモンド合成が期待できる電位領域も明らかとなった。 上記の結果に基づき、定電位電解により電析試料を作成した。基板材料としては、ニッケル板およびチタン板を用いた。まず、走査型電子顕微鏡(SEM)により、種々の形状の炭素の析出が確認された。また、析出物の一部は、結晶性と思われる形状を持っていた。次に、3D顕微レーザーラマン分光装置(Nanofinder30)により試料を分析し、炭素の結合状態を解析した。その結果、sp2混成軌道結合およびsp3混成軌道結合の分布状況を明らかにすることができた。 今後は、電解条件に関するさらなる最適化および電解試料の詳細な分析を進めることで、ダイヤモンドの合成が十分期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電気化学測定は順調に進んでおり、電解試料の分析も予定通りである。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の結果により、ある程度条件(炭素源および水素源の添加量や温度)の絞り込まれたLiCl-KCl系に関して、さらなる実験条件の最適化を行う。特に、電解電位、電流密度、基板材料を変化させてその影響を見る。前年度同様に、当研究室に既設の顕微ラマン、SEM、EDX、XRD、XPSを用いて詳細に分析し、ダイヤモンド性の高いサンプルが生成する条件を明らかにしていく。その結果を電解条件にフィードバックすることで、より良いサンプルを作成するとともにダイヤモンド生成のメカニズムの解明も行う予定である。
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