平成28年度は、前年度の結果に基づきLiCl-KCl-K2CO3-KOH系に関して、さらなる条件の最適化を行った。特に、温度については、650℃でsp3混成軌道結合の多い炭素が得られることが明らかとなった。さらに、700℃でも検討を行い、同様にsp3混成軌道結合の多い炭素が得られた。電解電位については、1.0~1.1 V vs. Li+/Li付近でsp3混成軌道結合の多い炭素が得られることが明らかとなった。サイクリックボルタンメトリーにより、この電位領域では水酸化物イオンからの水素ガス発生と炭酸イオンからの炭素析出が同時に起こることが示唆された。析出したsp2混成軌道結合の炭素が水素と反応してメタンとして除去され、析出したsp3混成軌道結合の炭素のみが残ると考えられる。さらに、定電流電解によってもsp3混成軌道結合の多い炭素が得られることが明らかとなった。 定電位電解もしくは定電流電解により得られたサンプルを3D顕微レーザーラマン分光装置(Nanofinder30)により分析した結果、複数のサンプルでダイヤモンドに特徴的な1332 cm-1付近の鋭い(半値幅の小さい)ピークが確認された。また、ラマンマッピング測定を行ったところ、サンプルによっては1332 cm-1付近の鋭いピークが平板サンプルの全面から検出されるものもあった。さらに、サンプルによっては、ややブロードな(半値幅の大きい)ピークも確認されため、ナノダイヤが生成したと考えられる。以上、溶融塩電解法により、世界で初めて常圧の液相からのダイヤモンド合成に成功した。
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