研究課題/領域番号 |
15K13809
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
黒田 一幸 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90130872)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | メソポーラスシリカナノ粒子 / バイオイメージング / 温度応答性色素 / 外表面被覆 |
研究実績の概要 |
1. 研究目的 : 複雑な生命現象の解析に向け、蛍光プローブを用いて位置情報と温度を同時に定量的に得る手法の確立が重要性を増しており、温度応答性蛍光色素と担体との複合化が検討されてきた。しかし、これまで生体安定性と温度感受性を両立したプローブ担体は無く、温度を定量的に長期間評価することは困難であった。本研究では、コロイド状メソポーラスシリカ粒子(CMS)へ温度応答性蛍光色素を導入し、細孔内部に閉じ込めることで理想的バイオプローブ担体を作製する。 2. 研究手法 : CMS の細孔内部に温度応答性蛍光色素を導入した後に、CMS の内部空間を維持しつつ粒子表面を選択的にシリカで被覆する。これにより、温度応答性蛍光色素を外部環境の影響から遮断可能かつ、生体安定性と温度感受性を両立した理想的バイオイメージング担体を作製する。 3. 研究成果: 本年度はCMS表面をシリカで被覆する手法の確立、CMS内部に色素を多く導入するための中空空間の創出 という二つの方針で研究を推進した。 ①CMSの表面シリカ被覆:CMSのメソ細孔空間を残しつつ、粒子の外表面のみをシリカで被覆する条件を探索した。弱塩基性条件下において、適切な量のテトラアルコキシシランをCMSの分散液に滴下することで、外表面の選択的な被覆に成功した。 ②中空型CMSの作製:コロイド状中空粒子の作製法は数多く存在しているが、非常に煩雑な操作を必要とするものが多い。申請者はCMSに架橋型有機シロキサンを被覆するだけで、自発的にシリカが溶解・再析出して中空構造のコロイド状有機シロキサンナノ粒子が出来る条件を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
①CMSの表面シリカ被覆:粒子の外表面のみをシリカで被覆する際、考慮すべき条件は膨大に存在するため、課題開始当初は相当量の労力を要すると想定していた。そのため、シリカ被覆条件は2年間に渡り長期間調査する予定であった。そのような中、本年度はゾルゲル反応の諸条件を調査したところ、塩基性条件下で適切な量のテトラアルコキシシランを添加することで、細孔内空間を残しつつCMSの外表面を選択的に被覆する条件を確立することに成功した。そのため、本研究項目は当初の計画以上に進展していると言える。
②中空CMSの作製:中心的課題であった表面被覆法の確立に成功したため、色素の導入に向けてCMSの中空構造化を検討した。メソ細孔の細孔容積と比して、中空空間の細孔容積は非常に大きいため、多量の蛍光色素の導入が可能であると期待される。申請者はCMSに架橋型有機シロキサンを被覆するだけで、自発的にシリカが溶解・再析出して中空構造のコロイド状有機シロキサンナノ粒子が出来る条件を明らかにした。この手法は非常に簡便かつ温和な条件でCMSが作製できるうえ、事前にCMS内部に蛍光色素を導入することで、簡便に中空空間内部に色素を封入できることが期待される。これは、バイオイメージング担体の作製を目指す本研究課題において、非常に価値のある成果であると言えよう。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度はCMSの内部空間を残しつつ、粒子表面のみを選択的に被覆する手法を確立した。そこで、来年度はCMS内部に温度応答性蛍光色素を導入したのちに、同様の手法により表面被覆することで色素の封入を目指す。この際、内部空間に取り込んだ色素の蛍光強度測定 を行い、メソ空間内に色素を導入する意義を明らかにする。 さらに、生体内には様々なpHやイオン強度の環境が存在しており、正確な温度測定のためにはいずれの環境においても同様の温度応答性を示すのか調査する必要がある。そこで、来年度は様々な条件下において温度応答性色素を内包したCMSの温度応答性を測定し、バイオイメージングのプローブとしての適応可能性を調査する。また、本年度作製法を確立した中空CMS内部にも蛍光色素を導入し、その流出を防ぎつつ表面被覆可能な条件を模索する。
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