1. 研究目的 :複雑な生命現象の解析に向け、蛍光プローブを用いて位置情報と温度を同時に定量的に得る手法の確立が重要性を増しており、温度応答性蛍光色素と担体との複合化が検討されてきた。しかし、これまで生体安定性と温度感受性を両立したプローブ担体は無く、温度を定量的に長期間評価することは困難であった。本研究では、コロイド状メソポーラスシリカ粒子(CMS)へ温度応答性蛍光色素を導入し、細孔内部に閉じ込めることで理想的バイオプローブ担体を作製する。 2. 研究手法 : CMS の細孔内部に温度応答性蛍光色素を導入した後に、CMS の内部空間を維持しつつ粒子表面を選択的にシリカで被覆する。これにより、温度応答性蛍光色素を外部環境の影響から遮断可能かつ、生体安定性と温度感受性を両立した理想的バイオイメージング担体を作製する。 3. 研究成果: 昨年度までにCMSのメソ細孔空間を残しつつ、粒子の外表面のみをシリカで被覆する条件を確立し、色素を多く導入するための空間を有するCMSを簡便に作製する手法を確立した。さらに昨年度にCMS内部に色素を導入したのちに、メソ細孔空間を残しつつ表面被覆をすることで、色素の閉じ込めに成功し、得られたCMSはデンスナノ粒子に色素を導入した場合と比較して高い温度応答性を保持し、メソ細孔内部に色素を入れることが温度応答性の保持に有用であることを明らかにした。本年度は色素導入量を増加させることを目的として、シリカ類縁組成と位置づけられる有機シロキサン系にまでナノ粒子調製を展開でき、特に中空構造の有機シロキサン系のコロイド状ナノ粒子創製まで可能としたので、当初の計画以上に進展した。
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