研究課題
分子性導体の主要構成分子であるテトラチアフルバレン(TTF)誘導体が常磁性金属イオンであるCu(II)イオンに配位したTTF-金属錯体,[CuII(EDT-sae-TTF)2]を用いて薄膜デバイスを作製し、電界効果トランジスタ(FET)として作動することを既に見出している。H27年度はデバイス特性の向上を目的に、分子間相互作用を増大させた分子として長鎖アルキル基やベンゼン環が縮環した新しい錯体を新たに合成し、スピンコート法による薄膜デバイスの作製とそのFET特性の評価を行った。FET特性に関しては母体となる錯体の特性と大きな違いがなかった。そこで、H28年度真空蒸着法による薄膜の作製を目的として、新たに4座TTF-配位子とそのCu(II)錯体である[CuII(EDT-bsae-TTF)]を合成し真空蒸着による成膜を試みたが、この錯体も蒸着過程で分解することが明らかとなった。一方,新規3座TTF-配位子を用いて,よりスピン多重度が大きなCo(II),Ni(II)イオンを用いた新規TTF-金属錯体を開発した。Co(II)錯体では分子間水素結合とらせん状に配置したTTFを介したチューブ錯体の合成に,Ni(II)錯体ではNi(II)イオンと配位子の酸素原子からなる強磁性キューブ錯体の開発に成功した。29年度は高い平面性に基づく大きな分子間相互作用の利用を目的として, salphen錯体を用いた薄膜デバイスの開発を行った。SalphenのNi(II)およびCu(II)錯体は,真空蒸着による薄膜化が可能であった。Ni(II)錯体を用いた薄膜デバイスはp型のFET応答を示し,その移動度はTTF-金属錯体よりも1桁高かった。一方Cu(II)錯体はトランジスタ特性を示さなかった。またNi(II)錯体は2か月間大気中に保存してもFET特性の劣化はなく,大気安定なトランジスタの開発に成功した。
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