【1】リン脂質によるリポソームの形成と蛍光色素導入に関して、まずリポソームの作製およびジャイアントベシクルの作製を行い、脂質と水分の比率の調整や脂質被覆氷滴の作製と水和を行い最適な条件を見出した。 【2】脂質球体の確認と顕微蛍光分光、化学・バイオセンシングの検討に関して、作成したリポソームを石英ガラスで挟み、溶媒中で測定出来るようにサンプル調製し顕微PL測定を行なった。その結果、顕微PL装置の光学顕微鏡だと落射光の影響で球体が観測できないことが明らかとなった。光学顕微鏡で観察できないことに対しての解決法として、①脂質二重膜を厚くする、②球体のサイズを大きくする、ということが挙げられる。次に厚い脂質二重膜をもつ大きな人工細胞モデルとして、ジャイアントベシクル(GV)の作製を試みた。作製したベシクルの球状構造を確認するため光学顕微鏡で観察した結果、球直径20ミクロンを超えるGVを確認した。また、同時に分厚い脂質二重膜を観測することができた。基板に滴下しGVを大気下で乾燥させたところ、球形を保たずにつぶれてしまうことが明らかとなった。作製したGVが特異な発光特性を発現するかについて、顕微PL測定を行なった。まず始めに、顕微PL測定を行なうために光学顕微鏡でGVを観察した結果、大きいGVと小さいGVが観測できた。それぞれについて顕微PL測定を行なった結果、GVからローダミンの発光を観測することに成功した。 【3】タンパク質の安定化と酵素の活性化に関して、リポソームなどの人工細胞系に封入することが可能な低分子の溶質を利用したタンパク質の安定化について研究した。タンパク質の表面への吸着を抑制する低分子試薬として、アルギニンのメカニズムを調べた。その結果、主鎖の電荷がタンパク質の分子間会合の制御に不可欠であることがわかった。さらに、溶媒環境によって酵素活性が増加する現象について論文に報告した。
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