研究実績の概要 |
本研究では、有機材料の中で最も高い熱電変換性能が報告されている導電性高分子(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)を発泡させることで、発泡PEDOT:PSSを作製し、無機材料に匹敵する実用レベルの高い熱電変換効率をもったフレキシブルな熱電変換材料を開発することを目的としている。高分子としてはキャリア数の多いPEDOT:PSSの熱伝導率と導電率の関係はおおよそWiedemann-Franz則にしたがうと想定される。しかし、発泡を行うことで、熱伝導率が小さく、大きな熱容量をもった空気とPEDOT:PSSが非常に大きな表面積で接し、界面を通して空孔に流れた熱がそこに蓄えられるため、熱伝導率と導電率の関係はWiedemann-Franz則を打破し、導電率を高く保ったままで、非発泡のPEDOT:PSSに比べて小さな熱伝導率をもたせることを目指す点に本研究の学術的な特徴がある。 主に、初年度の結果、有用な熱電変換性能を得た凍結乾燥を用いた綿状構造体の特性評価と性能向上のための試みを実施した。予備凍結の濃度および方法により、内部構造をある程度制御できること、これにより特に導電率に関して大きな性能向上ができることを明らかにした。一方、ゼーベック係数はあまり変化を受けず、熱伝導率も十分に小さいため影響は軽微であった。また、発泡に関しても凍結乾燥に準じた結果となることが想定される結果となった。 作製した凍結乾燥体は力学的な強度が脆く、そのまま使用するには強度の補強が必要とされる。このため、ポリスチレンなどのプラスチック材料を添加し、強度の補強を実施した。強度補強の結果、導電率が著しく低下してしまうため、混合についての検討を今後実施する。
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