研究課題/領域番号 |
15K13815
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
獨古 薫 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70438117)
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研究分担者 |
跡部 真人 横浜国立大学, 環境情報研究科(研究院), 教授 (90291351)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | イオン液体 / 電池 |
研究実績の概要 |
テトラグライム(G4)とLi塩からなる溶媒和イオン液体[Li(G4)][TFSA] (TFSA: bis(trifluoromethanesulfonyl)amide)を調製し、これと様々な溶媒を混合することでエマルション電解液の調製を試みた。[Li(G4)][TFSA]は様々な溶媒と相溶するが、ヘキサンやシクロヘキサンなどの誘電率の極めて低い溶媒とは相溶しないことが分かった。また、[Li(G4)][TFSA]とトルエンを混合した場合、[Li(G4)][TFSA]の濃度が1.2 mol/L以上の濃度の時には均一な溶液になるが、1.2 mol/Lよりも低濃度の場合には相分離が起きることが分かった。そこで、Tributyldodecylphosphonium TFSA ([P44412][TFSA])やTrihexyltetradecylphosphoniun TFSA ([P66614][TFSA])などのカチオン構造に長鎖アルキル基を有するイオン液体と、[Li(G4)][TFSA]を混合した電解液を調製した。これらのイオン液体は、カチオン構造に疎水性の長鎖アルキルを有しているため、長鎖アルキルが溶液中で非イオン性ドメインを形成し、ナノレベルではイオン性ドメインと非イオン性ドメインの相分離に近い状態になっていることが計算化学による研究から示唆されている。これらのイオン液体と[Li(G4)][TFSA]を混合すると、目視による観察では均一溶液となった。NMRで検討した結果、この混合液体中では、錯カチオン[Li(G4)]+の構造は保たれていることが示唆されたことから、液体中では[Li(G4)]+はアニオンに囲まれた状態でイオン性ドメインを形成し、非イオン性ドメインとナノレベルでエマルションに近い状態に近い状態になっていると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、溶媒和イオン液体とヘキサン、シクロヘキサン、トルエンなどの低誘電率溶媒を混合し、乳化させることで安定なエマルション状態を保つ電解液の創製を計画していた。しかしながら、安定なエマルション状態を保つ電解液の創製には至らなかった。そこで、エマルション電解液のコンセプトを生かし、長鎖アルキルを有する[P44412][TFSA]や[P66614][TFSA]などのイオン液体と、溶媒和イオン液体を混合することで、ナノレベルでイオン性ドメインおよび非イオン性ドメインを形成させたエマルションに近い状態となる電解液を開発した。よって、本研究はおおむね順調に進捗していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
長鎖アルキルを有する[P44412][TFSA]や[P66614][TFSA]などのイオン液体と溶媒和イオン液体を混合した電解液を用いてリチウム空気電池などの革新型二次電池の開発を行う。
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