研究課題/領域番号 |
15K13817
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
石田 謙司 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20303860)
|
研究分担者 |
三崎 雅裕 神戸大学, 学内共同利用施設等, 助教 (00462862) [辞退]
小柴 康子 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助手 (70243326)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 焦電型赤外線センサ / 透明 / 有機強誘電体 |
研究実績の概要 |
本研究は、利用者の視覚情報を損なうことなく、人の存在や動きを検知する「透明有機赤外線センサ」の開発を目的としている。平成27年度は、本研究では透明かつ鉛フリーである有機強誘電体を焦電層に用いることで、高い可視光透過率を有しながらも赤外応答する透明赤外線センサ素子の作製を試みた。 フィルム基板上にITO電極をスパッタ成膜し、その後スピンコート法により有機焦電層としてP(VDF/TrFE)を成膜した。上部電極としてITO電極を成膜することで、透明な焦電型赤外線センサ素子ITO/P(VDF/TrFE)/ITOとした。フーリエ変換赤外分光装置においてITO成膜前後のP(VDF/TrFE)分子振動ピークを確認したが、分子振動ピークの明確な消失、出現やシフトは確認されず、スパッタ成膜による有機膜のダメージや劣化は確認されなかった。三角波電圧を印加して分極反転処理を行った所、残留分極量70mC/m2となり、ITO電極においても典型的な金属電極Alなどと同程度の強誘電物性が確認できた。その後、黒体輻射炉から放射される赤外光をチョッパーにより任意周波数に変調しながら透明有機赤外線センサ素子に入射し、出力された焦電信号を検出することでセンサ感度特性を評価した。透明有機赤外線センサは、赤外線入射ON/OFFに対して明確に応答特性を示し、焦電型赤外線センサとしての駆動が確認された。また試作した透明素子は可視光域で60~80%の透過率を示し、目視レベルで透明なセンサ素子であることを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は概ね順調に進展している。学内研究者の協力により、最も一般的な透明電極材ITOの成膜が可能となり、また懸念事項であったスパッタ成膜時の有機ダメージも比較的小さかったことから、当初計画よりも短期間で透明赤外線センサ試作に移行できた。また当初予定していたセンサ測定セル作製も現有チャンバを改造、改良することで、測定可能としたことから、直ちにセンサ特性の評価を可能とした。しかし、当初、実測された透明センサの応答感度が従来センサよりも低かったことから、素子構造の最適化に取り組む必要がかあり、最終的には想定程度の進捗状況となった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究課題としては、透明センサの感度向上である。ITO膜厚の最適化、有機焦電膜の膜厚、構造の最適化などを実施していく。その過程においては、有機強誘電体としての分極応答性、焦電信号の入射赤外線波長依存性、透明センサの構造最適化などが必要となる。入射赤外線を分光器により単色化し、入射赤外線の波長に対する透明有機赤外線センサの応答特性を評価する。透明センサの赤外線吸収スペクトルと焦電応答スペクトルとの相関性を測定、解明することで、素子構造の設計指針を探っていく。またセンサ感度向上にむけて赤外線吸収材料の適用、微細加工によるセンサ部位の熱的アイソレーション、ファブリペロ干渉、などの特性を利用して、センサ特性の向上を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度、センサ測定セルの作製を計画していたが、現有チャンバを改造、改良することで、測定可能とすることに成功した。効率的に経費利用するため、今年度は測定セル作製は行わず、H28年度研究計画一部を前倒して実施する経費として利用することとした。なお、この購入計画変更に伴う研究計画の遅れなどはない。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成28年度には透明センサの応答感度の波長依存性の測定、及びセンサ感度向上に向けた研究開発を行う予定である。このうち、センサ応答感度の波長依存性の測定においては、中赤外線向けの光学部品、センサ構造最適化に向けた成膜試薬やメタルマスク、真空部品、基板材、AFMカンチレバー等の購入が必要となる。またセンサ感度の向上に向けては、赤外線吸収材料、電気回路試作のための電子部品などの購入が必須となるため、これら研究資材の購入に予算利用させて頂く。
|